一緒に住んでる友だちと少しばかりの擦り合わせ。
育った環境とそこで培ったルールが違う。
友だちとの摩擦と思わず、変化の筋肉痛だと思う。
だって、そうしたほうが良いよな。
そう思うことの方が多いから。
ラッキーだ。いい変化に恵まれて。
イブの日って、どうしてみんな浮き立つのでしょう。
本番よりも盛大に。
取らぬ狸の皮ほど、値打ちのあるものはないかのように。
25日はきっとみんな、厳かに過ごすのね。
何事もなかったかのように。
「私物が少ないね。流行っていたじゃない、ミニマルだっけ?ああいうのが好きなのかな」
同居したての若者は障子を開けては駒鳥のようにあちこち覗き込んだ。
「気づけばこうなっていました」
流行りのことは知らない。必要なものだけを選び取り、何もない空間の落ち着きを損ねないよう並べたら、茶室のような居室が出来上がっただけのことだった。
朝、布団に起きてそれを畳み、服を着る。
昼、書き物のために文机にペンとパソコンを開く。
夜、タブレットの中に物語を映す。
時々、煙管に火を入れて、窓の外をぼんやり眺める。
塵紙入れがあれば、困ることはない。
「必要なものは足りています」
「でも、彩りが欲しいよ」
そうして、穏やかな空間を削り、花器が置かれた。
土色の花器を彩るのは野の花だった。時には麓の花卉農家からもらった花束をばらして生けはじめる。
どこの流派でもない独創的な風景が部屋の片隅にそうして生まれる。
「和室に薔薇は難しいね」
棘だらけの茎を持て余した手が白い一輪をくるりと回す。
「だから、これはプレゼントする」
白い薔薇が一本、和装の胸に託される。併せの内側にはらりと落ちた花弁が滑り込んだ。
「──には、白が似合うね」
だけど、いま、花を生ける手は冬の中で眠りつづけている。
以来、穏やかだったはずの居室は色彩を欠いてしまった。
「どんなに人恋しくたって、一人で生きていくのだ」と、小さな頃、どうしようもなく思い知らされたことがある。
結果、父と繋がるのは手ではなく、物語で。
結果、母が愛でる頭は私ではなく、黒猫で。
結果、姉が抱き上げるのは私のぬいぐるみ。
愛されている、まぎれもなく。
確信するからこそ、寂しい。
純米酒、吟醸、大吟醸。
なーにが違うんだろう。
去年の味も覚えてなければ、銘柄さえも覚えていないのに。
いつか飲んだあの味を求めて、知らない地酒に手を伸ばすのである。
──とりとめもない話