桐原夜市

Open App
12/16/2024, 9:35:42 AM

耳がキンと冷たくて、空気が一段と澄み渡り、あらゆるものの色彩が眩く生々しく目に飛び込む。
雪が来る。
故郷に深々と積もりゆく予兆。その痛みが。
耳朶から鼓膜に向けてやって来る。

12/12/2024, 2:57:19 AM

その女には、顔に大きな傷がある。
寝ても覚めてもそこにあり、反射に写り込むたび目にはいる。
誰もがまずは傷を見る。驚きと恐怖と好奇心がそこに視線を惹きつける。
あの人は、どうやってその日々に慣れたのか。
慣れるはずもないか。
人生が一転して、バラバラに砕けた傷跡だ。
埋めて、消せはしない。
消してやりたいという気持ちさえ、迷惑千万な代物だ。
さて、どうしたものか。
空に白雲が答えを描くわけでもないのに、顎があがる。
知らんフリも何でもないフリもし難いものだ。いまさら親身になるのも気味が悪いだろう。
おそらく彼女には、どうして欲しいとも思われていない。
ううん。
ひとまず、惚れた立ち姿をほめちぎってこようか。

12/10/2024, 11:25:08 PM

我が道と幅取りて行く学ランの
群れぞ常より幅狭く雪

──仲間

12/9/2024, 2:32:32 AM

ふと、誰かのために手紙を書くのが嫌になる。
「いい字だな」
そう言って、頭を撫でまわしていく手に救われる。
「子どもじゃあ、ないんですよ」
素直な言葉は言えないけれど。