桐原夜市

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その女には、顔に大きな傷がある。
寝ても覚めてもそこにあり、反射に写り込むたび目にはいる。
誰もがまずは傷を見る。驚きと恐怖と好奇心がそこに視線を惹きつける。
あの人は、どうやってその日々に慣れたのか。
慣れるはずもないか。
人生が一転して、バラバラに砕けた傷跡だ。
埋めて、消せはしない。
消してやりたいという気持ちさえ、迷惑千万な代物だ。
さて、どうしたものか。
空に白雲が答えを描くわけでもないのに、顎があがる。
知らんフリも何でもないフリもし難いものだ。いまさら親身になるのも気味が悪いだろう。
おそらく彼女には、どうして欲しいとも思われていない。
ううん。
ひとまず、惚れた立ち姿をほめちぎってこようか。

12/12/2024, 2:57:19 AM