「友達なんていたって、面倒なだけじゃないか。僕はひとりでいいよ。ひとりのほうが気楽だしね」
僕はそう語る彼と縁側に並んでお茶を飲んでいた。
「そうかい。まあ、僕もひとりが好きなほうではあるけれど、君のことは友達だと思ってるよ」
そう一言述べて僕が茶を啜れば、隣の友人が何故か急に、ごほっ、ごほっ、と噎せ始めていた。
【友達】
私は別にずっと止まっていたわけじゃない。
歩みはゆっくりな方かもしれないけど、その時にできることはしてきたつもりだ。
それなのに、気付くと私はいつも置いていかれる。隣を歩いていたと思ってた人が急に遠くなる寂しさを私はあと何回感じることになるのかな。
行かないで、なんて。そう言ってみればいいのか。でも、そんな我が儘を言ったて、私の歩幅は変わらないし、先に行く人を止める権利は私にはない。それは分かってるんだけど。
誰かに少しだけでいいから、振り返って貰いたい。先に行っても待ってるからねと、そう言って貰いたいなんて、そんな甘い我が儘を心の片隅に持ち続けてる。
【行かないで】
どこまでも続く青い空が嫌いだ。
世界はこんなにも果てしなく広大なのに。
私はこの場所のほかにはどこにも行けないことを、思い知らされているようで。
どこまでも続く青い空が私には届かない幸せみたいで。
あの澄んだ青色が視界に映ると。
何だか泣いてしまいそうになるから。
私はこんなにも。
俯くことを覚えてしまったんだ。
【どこまでも続く青い空】
声が枯れるまで
何度でも私は訴え続けるよ
貴方が自分を嫌いでも
私は貴方が好きだから
貴方が貴方を好きになってくれるまで
何度でも
大丈夫だよって
大好きだよって
許すから
【声が枯れるまで】
忘れたくても忘れられないと、泣きじゃくる彼女をそっと抱き寄せる。
彼女に巣くう苦しみの全てを、僕が分かってあげることはできないけれど。
忘れたくても忘れられないものが、少しでも記憶の隅に薄れればいいと。
僕は彼女の背中に回した腕にぎゅっと力を込めた。
【忘れたくても忘れられない】