ひとりぼっちは寂しいって。
たまにふとそんな気持ちが湧く時もあるけれど。
誰もいない私だけの空間に。
膝を抱えてぽつんと蹲りながら。
どこか冷めた静寂に包まれる時間が。
生きるためには私には必要で。
だからこの部屋は。
私にとってのひとつの居場所。
【静寂に包まれた部屋】
「じゃあな」と言って、互いに手を振る。
くるりと背を向けて、前へと踏み出した。
数歩ほど行ったところで立ち止まる。
別に示し合わせていた訳でもない。
それでも後ろを振り返れば。
あいつも同じようにこちらを振り向いていた。
俺たちは同時に吹き出して一頻り笑う。
そうして次の言葉がまるで分かっていたかのように、二人して高々と開いた手のひらを天へと突き上げ、大きな声で叫んだ。
「「またな!」」
いつかまたこの世界のどこかで会おう。
それが別れ際に交わしたあいつとの約束だった。
【別れ際に】
小さな店の軒先で。
君と二人きりで雨宿り。
予期せぬ通り雨に感謝をしつつ。
「すぐに止みそうで良かったね」と笑う君の隣で。
まだ行かないでくれと。
遠離る雨粒に強く縋ってみたり。
【通り雨】
何気なく歩いていると、ふと小さな虫の声が耳を過る。
頬に当たる風が涼しげに触れていき、空気がさらりとするようになる。
そんなふうに気付いたら、いつの間にか秋はやって来る。
けれど過ぎ去って行くのも早いから、秋は少し物悲しい季節な気がする。
【秋🍁】
何も知らない土地に引っ越した。
初めての場所。
初めての風景。
とても緊張していたけれど。
いつしか窓から見える景色に。
心安らぐようになって。
一日の終わりに、ああ、疲れたなぁと。
溜息が自然に出て肩を下ろせるようになると。
僕はここが自分の帰る場所になったのかなと。
そんな自覚をし始めて。
ああ、良かったなぁと、ほっとする。
【窓から見える景色】