鳥のように飛んでいけたなら
僕はきっとこの大地から
逃げるように空へと羽ばたくだろう
けれど鳥のように空から大地を見下ろしたら
今度はまたこの広く雄々しい大地を
思いっきり駆けることができないことを
嘆くようになるのだろうか
【鳥のように】
私は貴方のことが好きだったのかもしれません。こんなことをいま言うのは少し卑怯かもしれませんが、言わずにはおけなかったもので。
ごめんなさい。ありがとう。
どうかお幸せに。
そう最後に告げて去って行く彼女の笑顔は、何かを吹っ切ったように澄んでいて、不覚にも綺麗だと思ってしまったことは、婚約者には秘密にしておこうと思う。
【さよならを言う前に】
青色。黄色。ピンク色。
オレンジ。黄緑。紫。赤。
白に黒に茶色やグレーまで。
いつからだろうか。
色んな色の小さな飴玉みたいなものがたまに空から降ってくるようになった。
飴玉みたいなものは地面に落ちると、パァンと弾けて空気へ散る。別に色の跡がそのまま残るわけじゃなくて、本当にパッと消えるだけ。
この不思議な空模様を最初はみんな不思議がっていたけど、今はもう慣れてしまったようにただ見てる。
異常気象と騒がれて、連日テレビで放映されてたのが嘘のようだ。
きっとこうして異常なものや不思議なものは、日常になっていくんだね。
【空模様】
どうしてかな。
鏡の前で何度も確かめて。
よし、この笑顔ならかわいいって。
大丈夫だって。
自分でも思えたはずなのに。
人前に出ると、その自信が揺らいでくる。
鏡の前で見た時と同じように。
私はいま笑ってるはずなのに。
相手の瞳に映る自分が見れなくて。
つい目を下へ逸らしてしまうの。
【鏡】
普段は頭の片隅にもないのに
何気なく掃除をしていたらふと目に入る
もうこれは使ってもいないし
別になくなったからって
生活に支障を来すものではないのだけれど
いざ手放すとなると
どうにも心の奥に引っ掛かる
そんなものばかりが
押し入れにある
箱の中に詰まっているのは
私だけしか知らない
【いつまでも捨てられないもの】