一年後にまた会いに来る。
そう言って固い握手を交わしたはずの友人は、半年もたたないうちに俺の元へとやって来た。
おい、こら、どうしたんだと。
約束の一年はまだ先だろうと問い質してやると、友人は「あれ? もう一年くらい経ったと思ってた。お前がいないと毎日が退屈でさ、時間が経つのも長く感じたからそのせいかも」と、実にあっけらかんしとした様子で宣ってきたものだから、俺は「バーカ。なら旅に出るなんて言って、俺を置いていくなよ」と叱ってやった。
【一年後】
その日から見える世界はカラフルに色付いて
胸のときめきを思い出すたびに
馬鹿みたいに幸せになった
【初恋の日】
明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。
色々考えてみては、色々と浮かんだけれど、案外ぱっとしないな。
実際に世界がなくなるとしたら、自分なら別にいいやくらいに開き直るかもしれない。
だってあんまり世界に思い入れもなければ、これからの日々に希望を抱けていたわけでもない。
ああ、でも、できることなら。
世界がなくなるその瞬間くらいは、せめて誰もが穏やかに過ごしてほしいものだ。
戦争をしている国があれば、こんなのはもう馬鹿馬鹿しいと銃を置いて。日々の絶望に苦しんでいる誰かがいるなら、変わらぬ明日を嘆く必要はもうないんだと、俯いていた顔を上げる。
どんなものでもいいから、その時が来たら、地上にいる全ての人が、何かしらの優しくてあたたかい感情に包まれていてほしい。
──と、せっかくだから、そんならしくない願いでもしてみようかな。
【明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。】
君と出逢ってから、いっぱい悩むようになった。
どうしたら君がこれ以上、傷付かずに済むのか。
どうしたら君がこれ以上、悲しみを背負わずに済むのか。
そんなことばかりを考えている。
だって君は自分よりも、誰かのために頑張る人だから。誰かのためなら、自分が傷付くのも厭わない人だから。
私は君の幸せを願わずにはいられない。
君ばかりが一人で戦わなくてもいいんだよ、と。君が何かに立ち向かう時は、一緒に戦わせてほしいんだよ、と。
そう言えるくらい、いつか私が強くなれたなら。
どうか私のことも、君の旅路に巻き込んで欲しい。
君と出逢ってから、私は・・・、もうずいぶんと長い距離を、歩けるようになったのだから。
【君と出逢ってから、私は・・・】
大地に寝転んで空を仰ぐ。
流れていく雲を指さして、その輪郭を辿るように掲げた指を動かして、そうして僕は様々なことを想像する。
あの雲はライオン。勇ましい百獣の王。立派な爪と牙に、猛々しい鬣を振り翳し、頂点に君臨し続ける。
あの雲はゾウ。何事にも動じない巨大な体躯の内側に、熱く滾るものを持つ。きっと暴れたら一番手がかかる。怒らせてはならない静かなるドン。
あの雲はウサギ。ふわふわで愛らしく、誰もに可愛がられる。けれど、とても強かで、生きるためにがむしゃらに跳びはねる。見た目と中身のギャップが堪らない。
あの雲はサル。知能に長けて、狡猾でずる賢い。そのくせ、愛嬌も忘れない世渡り上手。僕のちょっとしたお気に入り。いつかこいつに似たもっと知能の高い生命を想像してみてもいいかもしれないと、実は秘かに画策してる。
そこまで描いて僕は一息つく。掲げていた指を下ろし、寝転んでいた姿勢から起き上がった。
さあ、今日はここまで。
僕は今日の仕事ぶりに満足する。
空には僕が想像した様々な生き物の形をした雲が浮かんでいる。
空は僕のキャンバス。雲はさしずめ絵の具かな。色はまあ、ついていないけど、それはまた後で考えれば良いよね。
ここに描いたことをこの大地に実現するまでが僕の役目。本当に大変だけど、空はまだあんなに広いし、雲も充分過ぎるほど足りてるし、何より僕はこの大地が好きで、この仕事に誇りを持ってるから、全然苦ではない。
さあ、明日は何を創造しようかな。
【大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?】