「ここではないどこかで君と会えたら良かったんだけどなぁ」
背中合わせに立つ彼が、飄々とした口調でそう嘯いてみせる。
「そうしたら一時のロマンスが始まっていたかもしれないだろ」
「馬鹿なこと言わないで」
私は彼を振り返らない。
ただ目の前にいる敵だけを見据え、銃を構える。
「ここではないどこかで貴方と出会っていたら、こうして言葉を交わすことすらあり得ないわ」
貴方みたいな不穏で軽薄な人間に関わるなど、こんな物騒な事態に巻き込まれない限りお断りよ。
そうはっきりと言い放ってやれば、背後の彼が「きっついなぁ」と可笑しそうに笑ってから、右前方にいた敵を銃で撃ち抜いた。
視認できるだけで敵は20人。
ひとり10人ってことで。よろしくね。
ぽんっとエールを送るように肩を叩かれる。
やっぱり私は振り返らず、構えた銃の引き金を引いた。
【ここではない、どこかで】
届かぬ想いなら
いっそ捨ててしまおうか
そう幾度も考えては
けっきょく手放せず
宝物のように箱にしまいこんでは
大切さばかりが募っていく
ああ
なんと厄介で
なんて愛おしいのだろう
いっそ届かぬほうが
この愛しさの行方を知らずにすんで
幸せなくらいなのかもしれない
【届かぬ想い】
神様へ
こんにちは
毎日の日々をいかがお過ごしでしょうか
私たち人間はたびたび悩んでは頭を抱え
しまいには貴方頼みをしてしまうことが
多々ありますが
この一度きりの人生
そばで見守る貴方がたまにクスリと笑えるくらいは
日々を楽しんでいこうと邁進している所存です
どうかくだらない願いばかりをしてしまっても
話だけでも聞いてやってください
貴方がやれやれと内心呆れながらも
ただそこにいてくれると思うだけで
こちらはずいぶんと心が軽くなるものです
末筆ながら
貴方の存在に最大級の感謝と
未来永劫の繁栄を想いつつ
【神様へ】
突き抜けるような青い空が
どこまでも飛んで行けそうなくらい広がっていて
清々しい世界の広大さを
明るく示してくれている
下を向いているのが勿体ないくらい
下を向いてなんていられなくなるくらい
【快晴】
遠くの空へ連れてって
君となら
この世界の果ての果てまでだって
飛んで行けると思うから
【遠くの空へ】