休憩時間も忘れるくらい
がむしゃらに頑張る日々が
毎日毎日続いていた
ようやく抱えていたものが一段落ついた
ある日の帰り道
ふと視線を上げれば
地平線へと沈んでいく
オレンジ色の夕日が目に止まる
きっと昨日も変わらずに
沈む夕日はそこにあったんだろうけど
いま自分の目に映った夕日が
見たこともないくらいに眩しく思えて
ああ僕はもう休んでいいんだと
自分に優しくしていいんだと
安心したら視界が滲んだ
【沈む夕日】
君の目を見つめるといてもたってもいられなくなった。
まるで自分の汚い部分が全て見透かされているようでたまらなくなったのだ。
だから君を殺した。
これでもう怯えなくて済むと思ったのに。
どうしてだろう。
君と同じ目をした人間がそこらじゅうにいるんだ。
【君の目を見つめると】
かつて星空の下で語り合った彼らは
今頃どうしているのだろうか
それぞれの道を歩み始めてから
長い間連絡さえもとっていないけれど
いまもこの同じ星空の下で
この同じ星を眺めながら
あの夜に語った夢を
変わらず追っているのだろうかと
そう思いを馳せていたら
小さな流れ星が
空からひとつこぼれ落ちた
【星空の下で】
ただっぴろい白い紙が私の足下に広げてある
いまからここに私は文字を書き記す
何を書こうかはすでに決めていた
私の手には私の背丈と変わらぬほどの大きな筆
たっぷりの墨を含ませて
えいやっと意気込んで筆を紙へと置く
右へ滑らせ次に左
ここはしっかりはねて
ここはしっかりとめる
頭の中ではそうシミュレーションしてあったのに
実際の線は何とも歪で
美しさからは遠くかけ離れていく
それでも一度書き始めたら止まることはできない
私は理想とは違う線を
それでも精根尽くして書ききった
できあがりはやはり想像していたのとは全然違う
けれど
私はこの全然違う線をそれでいいと思った
それがいまの私にできること
いまの私の全てなのだから
【それでいい】
1つだけ迷ってることがあるんだ。
ある夜そんな悩みを抱えた友人から電話が掛かってきた。
聞けば友人は今度の週末に初めて出来た彼女と初めてのデートに行くらしい。
その彼女はスイーツが大好きで、できれば美味しいと有名なお店を何軒か一緒に回りたいという。
彼女はどちらかと言うと見た目が可愛らしい洋菓子よりも、優しい甘さの和菓子系が好きと言っていて、その中でも餡子を使ったものがいっとう好きということらしい。
友人はものすごく真剣な声音で、最後は鯛焼きの専門店と今川焼きで有名なお店のどちらに行けばいいかと尋ねてきた。
なんだそんなことか。
僕はそこでいったん思考をリセットする。
なんだそんなことか。
そんなしょうもないことで、こいつはこんな必死な様子で電話をしてきたのか。
僕は息を吸い込んだ。
そして思いっきり言ってやる。
どっちだって同じだろ!
どうでもいいわ、そんなこと!
いま何時だと思ってやがる!
安眠を貪っていたはずの僕に起きた、深夜2時のある夜の出来事である。
【1つだけ】