作品No.84【2024/06/23 テーマ:子供の頃は】
こうなるはずじゃなかった
こんな
全然オトナじゃないオトナになんて
なりたくはなかった
子どものまま大きくなったような
こんな自分になんて
もっとステキなオトナになると
思っていた
作品No.83【2024/06/22 テーマ:日常】
家から職場
職場から家
大体がその往復の繰り返し
大体がそういう日常
それでいい
そんなありきたりな日々でいい
作品No.82【2024/06/21 テーマ:好きな色】
昔は
黄色が一番すきでした
すきな花の色が
黄色だったから
今は どうだろう
暗い青もすきだし
濃いピンクもすきだし
黒もすきだし
でも うん
今使ってるスマートフォン
黄色だし
やっぱり黄色が すきなのかもね
作品No.81【2024/06/20 テーマ:あなたがいたから】
あなたがいたから
私がいる
そう わかってる
はずなのに
あなたのことを嫌っていく
私がいる
私がこの世に生まれたのも
私にこの名を付けてくれたのも
他ならぬ あなただ
それはもう
わかっているはずなのに
作品No.80【2024/06/19 テーマ:相合傘】
あの日は、ひどい雨だった。
バスで、家の最寄りバス停に着いてすぐに、折りたたみ傘を拡げた。そんな私の横を、きみが走っていく。ワイシャツに、赤い細リボンに、紺色のスカート——私と同じ制服姿のきみは、傘もささずに道を渡ろうとしていた。
どうしよう——と、逡巡する。
きみの家は、私の家の二軒隣だ。そして、私ときみは、小学校からの同期という関係でもある。だからつまり、傘を差しかけるくらいはできる。しかし、私ときみは、そんなに仲がいいというか親しいわけではない。そんな私が、そうしてもいいのかと、躊躇った。
やらないで後悔するくらいなら、やって後悔した方がいい——そのときの私は、そう決意した。それは、私には珍しいことだった。
走り寄って、無言できみに傘を差しかける。人一人入るのがやっとな傘は、二人分の雨を防いでなんてくれないとわかっていたけれど、それでもその傘をきみに差しかけた。
目が合ったきみが、何を言ったのか——今となっては思い出せない。「ありがとう」と、言われたのかもしれないが、思い出せない。
あれから、十年以上の月日が流れた。
もうきみは、この世にいないけれど。今でも私は、きみとの数少ない相合傘の記憶を思い出す。