水晶

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12/5/2024, 6:57:30 AM

『夢と現実』

生まれたばかりのヒヨコ達が庭で元気に遊んでいます。そこへお母さんニワトリがやって来ました。一羽のヒヨコが側に来て
「ねぇ、お母さん。お母さんはどうして白い色をしているの?」と尋ねました。
「それはね、ニワトリだからだよ」とお母さんは優しく答えました。
「ぴよちゃんはヒヨコだから黄色だけれど、大きくなってニワトリになるとみんな白い色になるの」

「そうなんだ!」
ぴよは目を輝かせました。
「じゃあぴよもニワトリになったらお母さんと同じ白い色になれるんだね!早くニワトリになりたいなぁ」
するとお母さんが笑いながら言いました。
「大丈夫。沢山食べていればその内なれるから」

それからぴよは沢山食べました。葉っぱも米もミミズも好き嫌い無くもりもり食べました。毎日兄弟達の何倍もの量を食べ続けました。
やがて早くニワトリになりたかったぴよはニワトリ…にはまだならず、大きな大きなヒヨコになりました。

12/4/2024, 9:48:17 AM

『さよならは言わないで』

ここ最近のお気に入りスイーツを求めて今日はコンビニエイトを4軒もハシゴした。
数あるコンビニの中で、ここエイトのスイーツは絶品だ。探していたのは「3色ミラクルくるくるチーズケーキ」。タルトカップに白、黄色、ピンクの3色チーズ生地が等分に入っていて色別に味が違うのでそれぞれで食べるも良し、ちょっと冒険して混ぜて味わうも良し、味が場所によって変わるのでネーミングのくるくるチーズケーキとは中々考えたものだ。

店に入るとすっかり顔馴染みになった店員さんが寄って来た。
「このチーズケーキ、これで生産終了なの」
あっという間に販売終了になるのが期間限定品の辛いところ。これが最後の1個だと言われ、手にしたパッケージをしみじみと眺めた。

こんなに美味しいんだもの、いつかまたスイーツ復刻版として戻って来てね。だから今はさよならは言わないんだから。

12/3/2024, 8:17:32 AM

『光と闇の狭間で』

明るかった視界が徐々に暗くなっていく。その狭間に浮かぶ赤い丸が一つ。あれは一体何だろう?

「紹介状を書くので専門の病院へ行ってください」
母の転院が決まり、私の生活は一変した。元々運転嫌いの私の生活圏内はせいぜい車で片道20分。それなのに今度の病院は片道でも2時間以上掛かるらしい。どうしよう…と知人に相談すると「病院までは一本道だし、途中バイパスにも乗るから大丈夫」と簡単に言う。その高速並みのバイパスが怖いんだって…と、もう言う気力も無く私はただただうなだれた。

3年前はそんなだったな…と、ふと思い出す。最初こそガチガチに緊張していた運転も、回数をこなす度に慣れていき、今ではバイパスも苦も無く運転出来る様になった。
今も病院の帰りで丁度バイパスを降りた。後は国道を走るだけ。今日も疲れたな…と思ったところで突然意識が遠退いた。

暗い中、赤い丸が近づいてくる。自分の頭上に差し掛かった時、ハッと我に返った。それが信号の赤だと気付いた私は慌てて急ブレーキを踏んだ。

11/30/2024, 7:47:27 AM

『冬のはじまり』

朝からガタガタとお隣の加藤さん家から音がする。私は何だろうと思いながらもこたつにあたりながらミカンを食べていると、今度はジャージャー水を流す音が聞こえてきた。
あれ?今日ってもしかして12月1日?

数年前の今日「キミちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど…」と、突然加藤さんの奥さんが訪ねて来た。何でも娘さんが窓掃除用にと買ってきたスクイジーを「水が綺麗に切れる!これは便利だ!」と加藤さんがいたく気に入り、もっと窓を磨きたいと駄々をこねていると言う。「良かったらキミちゃんの所をやらせて貰えないかしら?」

願ってもない事に、いいんですか!?と返すと直ぐに加藤さんがやって来た。嬉しそうに窓掃除をして以来、毎年冬の始まりには加藤さんが我が家の窓を磨いてくれる様になった。
外からコンコンと合図が来た。窓を開けて今日もお願いしますと挨拶すると、加藤さんは笑いながら任せとけ!と言わんばかりに手に持ったスクイジーを高く上げた。


11/19/2024, 6:07:49 AM

『たくさんの想い出』

会社の良子さんは黒髪の素敵な10個上の大先輩。最近何かの写真をスマホで見ている姿をよく見掛ける。何の写真ですか?と尋ねると「あなたには見せても大丈夫かしら…」と言いつつ、チラッと見せてくれた画像には茶色い紐のような物が写っていた。何だろう?と不思議がる私に良子さんは「じゃあ、夜、家に見に来る?」と誘ってくれた。

家に上がると「こっちこっち」と奥の部屋から声がする。初めて入る奥の部屋には、渡した物干し棒に薄茶色の紐が沢山掛けられていた。長さ約1mの紐は、遠目にはのれんの様に見える。「大事なものだから絶対に触らないでね」と言われ近づくと、それが全部ヘビの抜け殻だと気付いた私は後ろへ飛び退いた。

驚く私に良子さんは一番左を指さし「これは小さい頃祖父と一緒に山へ行って偶然見付けてね」縁起物だと言われ持って帰ったのが始まりで、これは翌年田んぼで、これは翌々年に道端で…。見付けた時のエピソード付きで並んだ順に抜け殻の想い出話しは夜通し続くのだった。




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