『光と闇の狭間で』
明るかった視界が徐々に暗くなっていく。その狭間に浮かぶ赤い丸が一つ。あれは一体何だろう?
「紹介状を書くので専門の病院へ行ってください」
母の転院が決まり、私の生活は一変した。元々運転嫌いの私の生活圏内はせいぜい車で片道20分。それなのに今度の病院は片道でも2時間以上掛かるらしい。どうしよう…と知人に相談すると「病院までは一本道だし、途中バイパスにも乗るから大丈夫」と簡単に言う。その高速並みのバイパスが怖いんだって…と、もう言う気力も無く私はただただうなだれた。
3年前はそんなだったな…と、ふと思い出す。最初こそガチガチに緊張していた運転も、回数をこなす度に慣れていき、今ではバイパスも苦も無く運転出来る様になった。
今も病院の帰りで丁度バイパスを降りた。後は国道を走るだけ。今日も疲れたな…と思ったところで突然意識が遠退いた。
暗い中、赤い丸が近づいてくる。自分の頭上に差し掛かった時、ハッと我に返った。それが信号の赤だと気付いた私は慌てて急ブレーキを踏んだ。
12/3/2024, 8:17:32 AM