水晶

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4/8/2024, 7:59:23 AM

『沈む夕日』

今日初めて、彼女の住む街へ行った。遠距離恋愛になって3ヶ月、久しぶりに2人で楽しい1日を過ごすことが出来た。

日も大分傾いたが帰りの電車の時間にはまだ少しある。すると彼女が見せたいものがあるから‥と歩き始めた。夕日に染まる海沿いの道を暫く進む。
小さな公園に着くと、そこには車やバイクが何台も停まっていた。「ここは夕日がとっても綺麗に見えるの。でね、あなたにこれから5分間動けない魔法をかけるから」

2人並んで海に近付く大きな夕日を見る。今迄黄色だった夕日が徐々に濃くなっていく。そして最後には燃えるようなオレンジ色に変わった。それからその熱を冷ますかのように夕日はゆっくりと海に沈んでいった。なんて綺麗なんだろう‥

身動ぎせずにそれを見ていた僕は、本当に彼女の魔法にかかったようだった。

4/7/2024, 8:14:45 AM

『君の目をみつめると』

花に誘われ空に誘われ、小鳥達が賑やかに飛び回っている。ツバメにメジロ、ヒヨドリにあの黒っぽい鳥は何ていう名前だろう?

天気の良い今日は外仕事と決め、家周りの片付けを
した。何故かポストの下に枯れ草がたまっている。それを丁寧に掃除して数時間、見るとまた同じ場所に枯れ草が落ちている。

不思議に思い辺りを見回すと、ポストの扉にも枯れ草が挟まっていた。なので扉をそっと開けると、中のスペース半分ほどに枯れ草が詰められ、真ん中に黒っぽい小さな鳥がちょこんと座っていた。
暫く小さな目にみつれられた私は、見かなった事にしようと扉をそっと閉めた。

4/6/2024, 8:32:44 AM

『星空の下で』

時々、負のループから抜け出せないことがある。
同じ考えが頭の中をぐるぐるするだけで何の解決にもならない時。そんな日は決まってうつむいているので目線が下がり、益々気分が落ちていく。

夜中まで鬱々としていたあの日、深夜のコンビニへ行こうと庭に出ると夜空に満天の星が輝いていた。
「うわぁ‥」と思わず声が出た。ぼんやりしていた目が見開き、丸くなっていた背中が伸びる。上を向く、たったそれだけで何故か力が湧いてきた。

悩む今日も夜空を見上げて星々に力を貰う。
くよくよしても仕方がない。また明日も頑張ろう。
私は背中を伸ばして息を深く吸う。

4/5/2024, 8:14:29 AM

『それでいい』

私が保育園年長の時、クラスの皆で近くの野原へ
お絵描きに行った。そこで先生に大きな紙を貰ってそれぞれ好きな場所に座った。

今日のお題は山。目の前には大きな山も小さな山もあり、皆一生懸命描き始めた。随分時間が経ち、色塗りを始めた私は暫く考えた。真ん中の影になった山の深い緑は何色で塗ったらいいのだろう‥。
ただの緑色とは違うし、勿論黄緑でも黒でも無い。
考えた末、私は山を紫色で塗った。

「ゆきちゃん!山が紫なんて変だよ!」
友達が周りで大笑いしている。分かってる。でもあの山はただの緑じゃないんだもん‥。
そんな中、先生だけがそれでいいからね、と言ってくれたのが今でも忘れられない。

4/4/2024, 6:39:04 AM

『1つだけ』

帰宅途中、妻から買い物のお願いのラインが入った。またか‥と憂鬱な気分で目を通す。買う物が
特定な物なら問題無いが、困るのは何でもいいと言われた時。本人は何でもいいと言いながら実は何でも良く無い事が多いからだ。

先日もそうだった。明日子供が学校へ持って行く
タオルを買い忘れたから‥とお願いされた。白の
フェイスタオルであれば何でもいいと言われ買ったところ「もう少しふんわりした物が欲しかった」と。毎回こんな調子でこっちはそろそろ限界だ!

家に着くと今日頼まれた「桜柄であれば何でもいいレターセット」を妻に手渡した。案の定妻はまた何か言いたげな顔をしている。そこですかさず桜柄の物はこれ1つだけだったよと伝えた。本当は桜柄が何種類もあったが、それは内緒にしておくとしよう。

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