Plum

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3/5/2024, 5:02:10 PM

瞼が開いて光を受容し、ぼんやりとした頭が徐々に冴えていく感覚。寒い。洗濯機回さなくちゃ、とかそろそろ朝ご飯食べる時間かな、とか考えながら、布団の中でもぞもぞと動く。
……布団から出られない。久しぶりに一緒に寝た娘ががっしり私の腕をホールドしている。くぅくぅと隣で寝息を立てる娘はさながら天使のようで、今彼女を起こしてはいけないと思い、布団から出ようとするのを諦める。
まあ、たまにはこんな休日も悪くない。



お題「たまには」

3/4/2024, 9:45:45 PM

手紙ってどれくらいラフに書いていいもんなの?まあ俺は俺なりに書くから普段通りのテンションで進めてくわ。

卒業するらしいじゃん。知ってたけど。就活で大変そうにしてる話も聞いてたしスーツのままオフィス来ることもあったし、知ってたけど。やっぱりお前が卒業とか実感湧かないわ。仲良い奴が転校する的な?転校した友達いないから分かんないけど。

俺らずーっと同期で一緒に仕事してきたじゃん?学生バイトとかいう身分の割には会社側も優遇してくれてたけどさ、途中で俺が正社員になって、お前はまだ学生バイトのままで。あの時はちょっと変な感じした。隣にいたはずのお前が一段下にいて、でもお前の方がスキルは高いの。ずるくない?お前の作るものは一つ一つ手が込んでて芸が細かくて、やっぱり面白くて最高なんだわ。あ、もちろんお前自身も最高な。お前と行った中だと隣の駅のラーメンが1番美味くて覚えてる。ギョーザにラー油かけるかで大揉めした所。もちろん俺はまだラー油はかけないから。そこは譲れん。

はー、本当に振り返る思い出が多すぎる。まあ振り返ってばかりいないで、お前も卒業するわけだし。

お前ならどこ行ってもやっていけるって信じてる。但し、俺のこと忘れんなよ。お前がいなくなるの、流石にちょっと寂しいから。嘘、やっぱ忘れて。



お題「大好きな君に」

2/29/2024, 10:42:11 PM

その上に乗ることはもうないからと
下に潜って地獄で待ってる



お題「列車に乗って」

2/28/2024, 10:59:08 PM

普段と同じ黒のタートルネックにプラスして、大きめのネックレスとイヤリングをつける。少し長めの時間をかけて作り出した顔面は意外と自分でも気に入って、これならといつも着けているメガネを外してコンタクトを入れた。
彼の前でも自信を保てるようにこの顔には少し不似合いな紅を唇に差す。よし、これで大丈夫。
20駅分ほど乗った先の美術館で彼と出会うため、1駅目を目指して家の鍵を閉めた。



お題「遠くの街へ」

2/26/2024, 10:59:55 PM

ブリーチはせず、色の落ちた部分にカラーを入れて。カットはそこそこに、アイロンで形を整えることに注力する。
「富田さんは今日何かご予定あるんですか?」
「大事な日なんです」
そう答える彼は、頬を僅かに紅潮させて唇を内にしまい、緊張しているような様子だった。
よく来る客で、連絡先も交換するほど馬が合う彼だったが、こんな一面もあったのかと思う。
「もしかして、デートとか」
「…………内緒です」
はぐらかされてしまった。まあいいや、とそのまま談笑を続ける。

「はい、こんな感じでいかがでしょうか」
「やっぱり乾さんにセットしてもらうのが一番綺麗。ありがとうございます」
美容師冥利につきることを言われて思わず口元が綻ぶ。
「じゃあ、この後のご予定もお気をつけて」

今日はもう予定はないから、といつでも店を閉められる準備をする。
彼は今頃__。いや、いくら仲が良いとはいえお客様にもプライバシーがあるのだから。そう思いつつも脳裏に女性の影がちらついてしまう。
Prrrr、とスマホの電話が鳴って思わずびくっとしてしまった。ディスプレイに浮かぶ、富田蘭の文字。
何か気に食わないところでもあったのかと、恐る恐る受話器のマークをタップした。
「もしもし」
『あ、乾さん、この後予定ありますか?』
「この後?は、、、予定入ってませんが」
『一緒にどこか出かけません?』
「……え」



お題「君は今」

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