キスだってさ。
シンプルにしとけよ。
この馬鹿め。
そうだねぇ。
確かにキスは複雑だよ。
けどそんな言い分は…
いやいや。
悪口じゃない。
ただの接物でもないし。
ただの経験則さ。
そうか、そっちね。
でもキスだって複雑だろ。
まぁそうだけど。
シンプルに居ようよ。
この煩悩まみれの愚か者め。
この先ずっと、
私は記憶されていたい。
誰かを意図せず救いたい。
100年先?それとも1000年先?
どのぐらい憶えていてほしいのさ。
えぇ、できるだけ長く?
そんなの無理だよ。
それでもいい。
私は歴史に名を残したい。
不名誉でも良いとさえ、
思うほどに、そう願ってる。
ふぅん。
そりゃあ難儀な生き方だね。
まるでマネキンみたいだ。
それなら
1000年先の人間は
きっとマネキンばかりだろう。
勿忘草ってさ。
なんであの名前なんだい。
これに関しては、僕
知ってるんだよ。
昔のヨーロッパでね、
恋人同士が花を贈りあったんだ。
「僕を忘れないで」
「私を忘れないで」 ってね。
それに──
へぇ、草が生えた瞬間に
しおらしくなるんだ?
忘れちゃいけない
そんな意味なのにね。
実に人間らしい。
そうかな。
君の「人間らしい」は皮肉だろ。
むしろ、これは素晴らしいんじゃあないか?
私は文豪になりたいね。
なれると思うかい、君は。
僕は無理だと思うよ。
ああ、夢は語るものだって?
叶えるかどうかは別として?
ならいいんじゃないかい。
語るだけならさ。
私にもし生まれつきの才があれば。
“ブランコ”これ一つで。
感動的な物語を創れたのだろうか。
青春の逸話を語れたのだろうか。
さあ?
僕はブランコが揺れることしか分からない。
揺れて、戻って、また押されて。
それしか知らないよ。
君もそうだろ。
まあ明日も
ここに戻ってくるさ。
確かに、君の言う通りだ。
私は生きたかった。
誰かを救い、誰かに陥れられたかった。
正当な理由を持つ生き方をしたかった。
生きていること自体に意味は無いだろう?
君にはあるかもしれないが。
少なくとも私にはないかな。
私は文豪に救われてしまったんだ。
文豪ってのは古臭い言い方だが──
──幾分か美しいんじゃあないか?
あぁ嫌だ、嫌だ。
素人がこんな事するとおかしな話になる。
取り敢えず、私は救われた。
作者は意図していないのにだ、
驚き、じゃあないかな。
君もないかい。
誰かに意図せず、救われたことっての。
生憎、旅路の果てにはこれしかなかったよ。
君もこちらで話せたら善いのになあ。