好きな人に可愛いねと言われた自分が好きだった
要らない子って言われる事の方が多かったから
高い声とか大きな瞳とか長い睫毛とか華奢な身体とか
可愛いね、可愛いねって褒められるのが気持ち良かった
凄く好きだった
でも13くらいで身体が大きくなって
いっぱい食べるのも可愛いって言われてたのに
いっぱい食べたら大きくなっちゃうから
可愛くなくなっちゃうから
ピアスもね
沢山付けたの
可愛いねって言われたから
沢山プレゼントしてくれるから
好きって思って沢山付けてたの
服もね
ちょっとだけえっちなのにしたの
華奢な身体が見てるように
ウエストとか自信あって
アイドルみたいに軽くて可愛い
髪もお揃いにしたの
その色が落ち着くし
大好きだから
メイクも可愛いのにした
睫毛とかアイラインとか
可愛い瞳が良いからカラコンも付けてる
綺麗って言われた目と同じ色を探して買ったの
でも変な目で見られる
アチェーツはずっと可愛いって優しくしてくれるのに
他の人はもっと沢山食べなきゃとか
風邪をひくよとか勿体ないとか可哀想とか言ってくる
普通じゃないって
普通って何?
もう可愛い服着ちゃいけないの?
好きな服着ちゃいけないの?
好きな事を捨てないとダメなの?
好きな人に褒められた事を好きになっちゃダメなの?
男の子で可愛いって褒められちゃダメなの?
男の子で可愛いを好きじゃダメなの?
アチェーツ
アチェーツ
教えてよ
俺だけを見てよ
-------------------
~あとがき~
心の衣替えってしなきゃいけないのか
アチェーツに、パパに教えてもらってないです
否定するママと肯定するパパ
毒は苦いって言うけど甘い毒もあるんだなぁって
書いてて思いました
ご飯は食べた方がいい
ネガティブになって本当に病むから
スープとかちょっとだけ食べましょう
ボク春雨とか好き
あなたはだれ?
こえがだせないの?
そうなんだ
わたしはこのいえにすんでるの
あなたのいえもそっくりね
ゆかもてんじょうもそっくり
おようふくもそっくり
でも
てはちがうみたい
ほら
わたしはみぎ
あなたはひだり
あとわたしのほうがきれい
あなたのおようふくよごれているわ
よごれがうごくの
まほうみたいね
もうごはんのじかん
またあいにくるね
さびしくないように
おきにいりのぬいぐるみをおいてあげる
あなたもおいてくれるの?
ありがとう
じゃあね
またあした
〜あとがき〜
ある動物は鏡に写る自分を“自分と認識出来ない”そうです
もし人間も自分を認識出来なかったらこうなるのかしらね
古ぼけた鏡に映る自分を同じ服を着た誰かと思い込む…的な
涙ぐむ彼女にフラッシュが1度だけ光る
大切な人を亡くしたと
その原因は自分にあると
そう自責の念に駆られてた彼女を撮影したのだ
『私が殺したのよ』
そう叫ぶ彼女を撮影した
周りは勿論驚いた
不謹慎にも程があるとカメラを持つ青年を小突いた
『これは撮らなきゃいけないものっすよ』
いつもなら満面の笑顔で言い訳をする彼の声が
あまりにもか細く震えてて
彼も彼なりに傷を負ったのを伝えている
それなりに故人の存在が大きかった
『あの人が生きていた事を』
『あの人が此処に居た事を』
『触れられるものとして遺すには』
『こうするしかないんすよ』
ぽつりぽつりと彼なりの理論を展開する
彼女の為に寄り添い、誰が悪いという訳では無いと
ただ慰めていた少女は言葉を詰まらせた
『今生きてる俺らは』
『泣いて後悔するよりやらなきゃいけない事がある』
『だから俺っちはこうした』
『俺っちにはこうするしかなかったっす』
前を向かなきゃいけない人が居る
自分と向き合わなきゃいけない人が居る
これから先の為に動かないといけない人が居る
その人達の努力や功績を出来る限り多く遺す必要がある
『アンタはホント…』
涙ぐみながら普段と変わらない行動をしようとする彼に悪態をつこうとした
でも言葉が浮かばない
不謹慎で最低で空気も読めない彼に
自分は…
『ありがとう』
一言零した
『ずっと言いたかったの』
『ありがとうって』
『簡単な一言を』
途切れ途切れに後悔を語る
どうしようも無い後悔
感謝の気持ちをいくら伝えても死人からは何も返ってこない
『ベルちゃんは不器用だからちょっと遅れちゃったんだよね』
『でもね、今からでも遅くないよ』
『久保さんはね、優しいからね、きっと見ていてくれるよ』
彼女よりも幼い少女が懸命に慰める
秋晴れの空のような水色の髪を梳く
大切な人達に沢山褒められた髪を
ただ優しく撫でてくれる人達が居る
『受け入れてくれてありがとう』
『助けてくれてありがとう』
『友達みたいに』
『家族みたいに』
『接してくれてありがとう』
今まで言えなかった感謝の言葉が流れ出す
堰き止めてた全てが決壊したように
涙と同じくらいに
『傍に居てくれてありがとう』
1つでも届いて欲しいと願いながら
〜あとがき〜
生きてる人が覚えていれば死は永遠であり彼はいつまでも家族であり友人であり仲間である
目の前に居るのは敵だと誤魔化せればどれほど良かっただろうか
血の繋がりとか愛の繋がりとか長い間柄とか何もかも関係無くて
ただ面と向き合ってる自分達が“相容れないものだった”で済ませられればどれほど楽だろうか
大きな掌を振り上げる貴方が
我が子を後目に涙を流し続ける貴方が
幸せと不幸を見比べて自分の方がと喚く貴方が
当たり前のように笑っていてくれると信じてくれた貴方が
聞こえない所で小さく影を産む貴方が
紅葉のように染まっていく貴方が
居場所が無いからと寄り添おうとする貴方が
不運を共に背負えないと零した貴方が
現実と非現実を混ぜて嘲笑う貴方が
1人では何も出来ない貴方が
ただただ憎らしく思える貴方が
こんなにも愛おしいと気付くのは
あまりにも残酷じゃないか
あまりにも残酷じゃないか
〜あとがき〜
人の目って、凄く嫌いな人を見る時に鋭くなるよね
でも嫌いだなって思う反面好きだなって所もあったり
どっちも通り過ぎると“どうでもいいなぁ”ってなったり
嫌いな人に対する眼差しってどうしてあんなに怖くて悲しいんだろうね
“ここまでだ”なんて一言でキミを見送るにはあまりにも寂しいではないか
共に生きて笑い困難に立ち向かい酸いも甘いも語り合った仲ではないか
充分生きたではないか
いや、まだ死ぬ訳ではないが
もしも此処で死ぬのであれば
キミに何かしらの言葉を送りたい
己のやるべき事を即座に行動に移せる判断力
目標も目的も見失わない強い信念
その為に手を差し伸べ朽ちていく仲間に向ける優しさも
何もかもを兼ね備えたキミに何かを送りたい
どうか何処までも
何処までも昇ってくれ
高く高く
神にも届く程に
天高く
そこにあるキミの幸せを願って
〜あとがき〜
見送る側の視点って書くの難しいですよね
あまり長くしたくない
見上げてると首が痛くなりそうだから