4/9/2024, 3:43:13 AM
『どうか、幸せに』
そう言って僕の手を離したあの人を絶対許さない。
息を飲むほど美しい微笑みを浮かべ、手を離したことに悲しみも、後悔もそこには無い。
心の底から僕を手放すことが、僕の幸せに通じると勘違いしている。
その見当違いに、腹立たしさが膨れ上がる。
ここまで、愛情を与えずぶずぶに甘やかして、僕を手放す?
ありえない、許さない、絶対に!
無責任な飼い主には、報復を。
「これからも、ずっと」
呪(おも)いを込めて僕は彼女の手首を掴み返した
4/5/2024, 9:15:14 PM
「きーらきーらひーかーる、おーそーらーのほーしーよ・・・」
今にも消え入りそうな声で、腕の中の彼女は歌う。
コロコと星が弾けて一瞬で消えていくような、綺麗で、刹那的な思いを感じさせる、物悲しい歌を。
「ああ・・・『お家』にかえりたいなぁ・・・」
ありったけの望郷の思いを載せた言葉に、私は彼女を抱きしめている腕に力を込めることでしか答えることができない。
再び彼女の歌が、あたりに響く。
聞いたこともない歌で、共に歌ってあげることもできない。
彼女もそれを望んでいるはずがない。彼女が、私が共に歌うことができない、故郷の歌を選んでいることが何よりの証拠だ。
私はそんな彼女の顔も見れず、星空を共に見上げることもできず、ただわずかに先の地面を睨みつけることしかできなかった。
それは、元の世界に戻る手段を奪われた迷い子と、迷い子を愛するが故に帰る手段を奪った男の終着点。
4/2/2024, 10:14:07 PM
いつだって世界は無常だ。
必死に掻き抱いて大事に守ってきた大切なものから、
コロコロとこぼれ落ちていく。