時々同じ夢を見る。
誰かわからない少女が海へ進む様子を
僕は見ていて手を伸ばすんだけど
彼女は手を取ることはなく
振り返って僕を見て笑うんだ。
そして彼女を包むような高い波が来て
彼女は消えるこんな夢を見る。
でも僕はこの少女を知らない。
この経験はしたことが無いから
過去のトラウマを見ているわけじゃない。
誰が海へ進む彼女を止めることができるのだろう
─────『海へ』
「もう何回言ったらやってくれるの?
くつ下は裏返しにしないでって」
ママはいつも僕にそう言って怒る。
でもママは僕に甘いんだ。
「くつ下くまさんだ。かわいいね。」
僕がそう言うとママは少し笑うんだ。
でもはやく直さないと。
本当に怒られてしまうかもしれないし
許されなくなっちゃうかもしれないから。
僕も怒られるけどパパもママに怒られてるんだ。
「くつ下裏返しなんだけど」
僕とパパは似てるのかもしれない。
僕もパパもママに怒られないように
一緒に直していこう。
そう約束をした僕とパパ
─────『裏返し』
鳥のように好きなとこにいたい。
誰かが近づいたら飛んで
仲間なら隣に並んで
ぼーっとしようよ。
鳥のように自由になれたなら
─────『鳥のように』
さよならを言う前に
そんなに優しい顔をしないで欲しい。
わざわざさよならを言うなんて
あなたぐらいしかいないんじゃない?
どんな言葉を言ってもあなたは笑顔だから
あなたの事が分からないわ。
さよならを言う前に
もっと貴方を知りたいと思った。
─────『さよならを言う前に』
今日の空模様は良くない。
今日の私はついてなかった。
朝は寝坊するし
スマホの充電出来てなかったし
つまづいて膝怪我するし
今日早く帰ってしまおう
そう思うのがもう少し早ければ
こんな路地裏で人ひとりの最期の瞬間を見るのも
なかったに違いない。
今頃ホントだったら
朝からの不幸を忘れて
おいしい夕飯を食べているくらいだろうか
そう思いを馳せる辺りに血の匂いが広がる。
思わず手で口を覆った。
ここは音を立てずにその場を離れるのが吉。
そう思った私は急いで元の道を戻った。
変な人影を見たからって路地裏にはいったのは
今日一番の間違えだった。
途中小石を蹴ってしまったが
変に振り向くと顔がバレる。
今にも雨が降りそうな空模様のおかげで
暗くなっているのはせめてもの救いだった。
早く交番に行こう。
今見た光景が嘘かもしれないが
それが嘘でも一応確認したかった。
私は1人の最期を見てしまったのか。
あぁ今日の私はほんとついてない。
─────『空模様』