終わりにしよう
そう決めたのは何時だっただろうか
どうしてだっただろうか
終わりの見えない日々に
飽き飽きしていたのかもしれない
単純に新しいことを見つけたかった
そうかもしれない
終わりにすることは
新しいことの始まり
だから前を向いて、自信を持って
決めたんだ
終わりにしよう
手を取り合って
少女は無邪気に手を差し出した
少年は少々照れくさそうにためらう
けれど少女は差し出した手を引っ込めることなく
静かに待っていた
少年はそんな少女の表情を見る
笑顔で頷く少女の手に
少年は意を決して自分の手を重ねた
手を取り合って歩く通学路
夕陽が二人の影を長く伸ばしていた
優越感、劣等感
いつだって自分は劣っている人間だと思っていた
周りからできない子だと言われ続けていたし
実際、運動だって勉強だってできていなかった
だから急に持ち上げられて調子に乗ってしまった
知らない世界で
周りの人はみんなリアルの僕を知らない
すごいね、上手いねって急に言われて
こんな自分にも得意なことがあったんだって
ようやく自分のこと
少しは好きになったような気がしていたんだ
だけどリアルの周囲は僕のこと
何も理解してくれなくて
僕の世界は取り上げられ、壊されてしまった
僕はまた自分のことが嫌いになってしまった
これまでずっと
その光景を見て愕然とした
閉め切られたカーテン
あちこちがほつれて丸められた布団
食べ物の容器が散乱したテーブル
これまでずっと
君はこんな空間で生きていたのか
誰にも気にされることなく
誰のことも知ることもなく
無力を感じていただろう
でも誰にも言えなかった
誰も助けてなんてくれないから
この部屋にあったのは静かな絶望
この空間で君は
少しづつ壊れていってしまった
1件のLINE
不意に部屋に響き渡る通知音にびくっとなる
自分のスマホに通知がくることなんて
ほとんどないから
アプリも必要最低限しか入れていないし
LINEだって必要最低限
周りにあんまりにも言われるから入れただけ
そして連絡先を交換したところで
結局誰からも連絡がくることなんてなかった
だから少し緊張しながらスマホを手に取った
こんな自分に連絡してくるなんて
悪い連絡に決まっているのだ
先のことなど誰にもわからないけれど
この1件のLINEが自分の運命を変える
そんな気がしていた