誰にも言えない秘密
穏やかな寝息を立てる君の髪を撫でて
静かにベッドから抜け出す
別れの挨拶も、再会の約束も
俺にはできなかった
この夜が明ける前に俺は隣国へ渡る
この国で手に入った情報を持って
俺はとんでもない裏切り者だ
こちらにも、あちらにも
俺の居場所なんてない
だからうっかり優しくしてくれる
君の隣に居場所を求めてしまった
いけないことだとわかっていたのに
全ては俺の、俺だけの罪
いつかは報いを受けるのだろう
もう君を巻き込むわけにはいかないから
全てを秘密にして、俺はこの部屋を去る
狭い部屋
ワンルームの僕の部屋は正直ちょっと
いやかなり狭い
ベッドを取り囲むように棚を設置して
机の奥にはテレビとモニター
手前には液タブとタブレット
置けるだけ置いたフィギュアたち
壁には1面のポスター
ベッドにはぬいぐるみ
僕の部屋は物がたくさんで狭い
だけど
好きなものだけを集めた
最高の狭い部屋なんだ
失恋
恋の終わりはいつだって突然
恋人がいることがわかったり
好きな人がいることがわかったり
始まることもなく
僕の恋は終わっていく
今回だって数多くの
始まることのなかった恋のひとつだ
なのにどうして
こんなにも心が苦しいのだろう
思い上がっていた自分が恥ずかしいのか
本当に君に惹かれていて
諦めきれないのか
明日からもう君に会えない
君を見てしまうと
未練で胸がいっぱいになってしまうから
正直
君の正直な気持ち、聞きたいんだ
いつだってのらりくらりとかわされて
焦らされて
僕はいつも気が気じゃない
君は時々話に嘘を混ぜてくる
特に気持ちに、主観で思っていることに
君が自分に正直になることが苦手なこと
気付いているんだ
僕の正直な気持ち、言ってもいいかな
君は知りたくないかな
だけど正直
僕は自分の気持ちに向き合いたいんだ
君のこと、放っておけないから
君のこと、大好きなんだから
梅雨
私は梅雨というものを知らない
この時期に雨が降ると
ああ、これが蝦夷梅雨というものなのだろうか
そんなことを思ったりもするけれど
結局翌日にはからりと腫れていたりして
内地の人たちにとって
それはうらやましいことなのだろう
ジメジメした日が続かなくて
気を抜くと家の中がカビだらけなんて
そんなことにもならなくて
どんなにここで雨が降ろうとも
遠くで暮らすあなたにとって
それは梅雨とは呼べるものではない
うらやましく思われるけれど
私は少しさみしくもある
あなたと同じ気候を
共有することができないから