言葉にできない
たくさん考えていたんだ
君に会ったら何を言おうか
天気の話、君の服装の話、僕の気持ち
でも君の顔を見たら
全て飛んでしまったんだ
気合をいれておしゃれをしてきたらしい君は
とてもとても可愛くて愛らしくて
僕のためのおしゃれだと思うと
嬉しすぎて
その服を、化粧を褒めたいけど
嬉しい気持ちを伝えたいけど
どう表現すればいいかわからないんだ
ああ、言葉にできない
こんなに君が好きなのに
こんなに君に愛されて嬉しいのに
何も言葉にできないまま
僕は君と並んで街を歩く
春爛漫
あたたかな陽ざしにさそわれて
久しぶりに出た外の世界はまぶしかった
まるで夢の中にいるような心地で
桜の花びらが舞う坂道を駆け上る
丘の上の公園は花々が咲き乱れていて
レジャーシートを敷いて
お弁当を囲んだみんなが待っていた
声をかけると思い思いに手を振って
僕のことを迎えてくれる
あたたかな陽ざしにてらされて
みんなに囲まれて
春が訪れたんだとようやく実感した
誰よりも、ずっと
いつから君を
こんなにも好きになっていたのだろう
出会いは険悪
いつだって口喧嘩
それがいつの間にか
お互いに本音を言える唯一の相手になっていて
誰よりも信頼できて
誰よりも安心できて
愛おしい存在になっていた
誰よりも、ずっと
君のこと、一番知っているつもり
誰よりも、ずっと
君のこと、大好きだよ
これからも、ずっと
君の声で起きて、ごはんを食べる
君が作ってくれたから、後片付けは僕がする
君と手を繋いで外に出て
行ってきますって手を振る
待ち合わせして買い物に行って
ふたりで台所に立って
今日の他愛のない出来事を話しながら
晩ごはんをすませる
ふたり一緒にお風呂に入って
ゆっくりと時間を過ごして
ふたり一緒に一日を終える
なんでもない穏やかな日々
いつかは終わりがくるのだろうけるど
これからも、ずっと
君とこのなんでもない毎日を過ごしたい
沈む夕日
君と僕、並んで空を見ていた
青からオレンジに染まり
やがて深い闇に落ちるだろう
君は何も言わなかったし
僕も何も言えなかった
ただ二人並んで、静かにその時を待っていた
このオレンジ色の光が沈んでしまったら
君も、僕も、消えてしまうだろう
君は仮初めの生を与えられた幻で
それに気づいてしまった僕は
もはやこの命、捨てるしかないのだから
君は何を考えているのかわからない表情で
僕は溢れる感情を必死に抑えて
ただ静かに沈む夕日を見ていた