バカみたい
アイツはいつもバカみたいだった
バカみたいに正直で
バカみたいに笑って
いつもバカみたいに私の後ろをついてきた
私は面倒見のいいコだったから
バカみたいなアイツがほっとけなくて
いじめっこにも立ち向かったし
いつも一緒に過ごしていた
だからアイツが少し恥ずかしそうに
私に報告してきた時
初めて気付いてしまったんだ
アイツのこと、ずっと好きだったんだって
バカみたいなのは私の方だった
気持ちが離れて初めて気付くなんて
報告を聞いて冷静に「おめでとう」なんて
言えることもバカみたいだった
誰もいない部屋でひとり
私はバカみたいに泣いた
二人ぼっち
どこまでも続く空
木々の間を吹き抜ける風
草むらに寝転がる君と僕
かすかに聞こえる虫の声
風に吹かれて葉のこすれる音
空を見つめる君の息づかい
この世界で今この瞬間
君と僕は二人ぼっち
静かな空間で静かに過ごしている
夢が醒める前に
まどろんでいる僕の前に
君が舞い降りる
もう会えるはずのない君に
これは夢なんだと気付かされる
幸せなひとときなのに
なんて残酷なひとときだろう
だけどせめて
この夢が覚める前に
もっと君の姿を脳裏に刻んでおきたい
君のこと、忘れたくない
胸が高鳴る
待ち合わせには余裕がある時間なのに
家を飛び出して走る
きちんと整えてきた髪が乱れても
構っている余裕なんてない
君が来るにはまだ早すぎる時間なのに
そわそわと辺りを見渡す
我ながら挙動不審と思うけど
気にしている場合じゃない
もう少しで君に会える
それだけなのに
どうしてこんなに
胸が高鳴るのだろう
不条理
とにかく、色々降ってくる日だった
上の住人がうっかりで落とした植木鉢
予定外の急な仕事
予報になかった突然の雨
俺が何をしたというのか
雨を避けるため軒下に入る
そこのお店はもうやっている時間じゃなく
暗く、静かな空間に雨音だけが響いている
と
雨音を切り裂くような悲鳴が遠くから近づいてきて
天井に張られた布が大きくたわむ
バウンドして落ちてくるのは小柄な女の子だった
どうして!?
とにかく受け止めようと飛び出す
どうやら不条理すぎる一日はまだ終わらないらしい