終わらせないで
荒野に高々と剣戟の音が響き渡る
色々な因果があって対立することになった俺とお前
だけど今日、全てを終わらせる
撃っては返し、撃っては返し
互角に思えた一騎討ちは唐突に終演を迎える
キィン…!
甲高い音と共に空高く舞い上がるお前の剣
負けを悟ったのかお前はうなだれ
俺の前に膝を付いた
剣を振り上げる
このまま振り下ろせば全て終わる
だが
脳裏をよぎる彼女の顔に
俺は剣を収めた
「まだ終わらせなくないって喚くやつがいるからな」
驚きの表情を浮かべるお前に伝える
お前は納得した風に驚きを収めたが
さみしそうに首を横に振る
仲の良かった幼なじみの三人
このままでも辛いことはわかっているけど
終わらせないで
あの時
俺に背を向けながらも確かに聞こえた声
彼女はまだ諦めていないのだ
愛情
あなたのために部屋をぴかぴかにするの
あなたの好きな色でコーディネートして
おしゃれなオブジェも飾ってみちゃう
あなたのために美味しいご飯を用意しているの
あなたが好きなお肉をメインディッシュにして
栄養バランスも考えて沢山作っちゃった
ああ、早く帰ってこないかな
あなたが大好きなの
精一杯の愛情を込めて
あなたのこと、待ってるからね
微熱
身体のだるさと喉の乾きで目を覚ます
時刻は五時半
起き出すにはまだ早い時間だが
二度寝すると起きられないような気がする
ふらふらとトイレに行き
冷蔵庫からミネラルウォーターを出し
コップに注いで口をつける
動けない訳では無いが
明らかに調子がおかしい
引き出しから探すのに苦労しながら
ようやく目当ての物を見つけ出す
しばらくこんなこともなかったから
用がなかったのだ
電子音とともに
告げられた数字は37.2
とてつもなく微妙
会社を休むほどの数値ではない
どうしよう
だるい身体をもてあまして
ベッドに身を沈める
そのまま意識が遠のいていって…
結局寝坊して上司からの電話で起きて
その日は休むことになってしまった
太陽の下で
地球の環境が過酷になり
人々は地底に居場所を求めた
それがたかだか五十年前の話
爺さんたちはあの頃を懐かしむように
地上の話をするけれど
僕たちは太陽を知らない
眩しく
暖かく
空高く浮かぶ光
僕たちは太陽の下に出たら
何をするだろう?
太陽の下で何をしたい?
叶わぬ願いかもしれないけれど
いつか地上を見てみたい
太陽の下で青い空を見上げてみたい
セーター
毛糸を編む
あなたの好きな色の毛糸を
思いを込めて
願いを込めて
編み込んでいく
まだまだ形にならないけれど
何度も失敗して
解いては編み直しているけれど
不思議と嫌にならない
このセーターが完成したら
あなたに届けに行く
私の精一杯の勇気で
私の気持ちを伝える
毛糸を編む
あなたのことを考えながら
いつだって
あなたのことを思っている