木弓るん

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10/29/2023, 12:27:02 PM

もう一つの物語

静かな月の夜だ
私は墓前にひとり立っていた
そこで眠る彼女に
彼の物語を報告するために

今頃彼は人々に囲まれ
賑やかに祝われているだろう
彼の活躍をもってして
一つの物語が幕を閉じようとしている

だけどその裏で
もう一人活躍した人物がおり
その主人公たる彼女の物語は
誰にも知られぬことのないままだろう

全て終わったよ
安心して眠るがいい

私はそれだけ告げてその場を立ち去る
私の物語もそれで終わった

10/28/2023, 12:24:23 PM

暗がりの中で

悪夢に、目が覚める
内容は思い出せない
ただ、全身汗びっしょりで
心臓がバクバクいっている

今何時だろう
思ったが時計は見ない
部屋は暗く
朝には程遠いことはわかるし
時間を見てしまうと
翌日も同じ時間に起きてしまうって
何かで見た

暗がりの中
電気もつけずに用を足し
軽く汗を拭く
水を飲むために開けた冷蔵庫の明かりが
やたらと眩しく感じられる

ベッドに戻るが
なかなか寝付けそうにない
こんな日は君のこと
考えながら過ごしてもいいかな

10/27/2023, 10:40:52 AM

紅茶の香り

惜しみなくフリルがあしらわれたドレスを着て
髪は綺麗に巻いてヘッドドレスをそえる
サーモンピンクのチークとリップで魔法をかけて
目の前に運ばれる三段のケーキスタンド
並べられたケーキはどれもつやつやで
まるで宝石みたい
花の意匠があしらわれたティーカップに
高い位置から紅茶が注がれる
花のような、果実のような
やわらかな香りが沸き立って

そこで名前を呼ばれて目が覚めた

まぁ、夢ですよねあんな素敵な体験
だけど
ふわりとした紅茶の香りが確かにする

お茶が入ったので起こしに来たんですよ

ああ、確かにそうだった
お湯を沸かしている間にうたた寝してしまったんだ

夢の中ほど豪華じゃないけど
とっておきの紅茶、いただきましょうか

10/26/2023, 11:34:47 AM

愛言葉

いつも探している
君に伝える言葉を

少し青くさいかな
カッコつけすぎかな
恥ずかしくて
いざとなると言葉にできないかな

色んな想いでぐるぐるして
悩んで
決意して
でも躊躇って

正解がわからない

君に伝えたい言葉は
結局いたってシンプルで
それなのに
なかなか口にできない

君に伝わって欲しい
愛言葉

10/25/2023, 2:24:17 PM

友達

「私たち、友達だよっ」

そう言って
あなたはわたしに呪いをかけた

友達だから
友達でしょ
友達なら

その言葉で
わたしはいつだって自分を呑み込んだ

あなたはみんなの人気者
いつもわたしと一緒にいながら
わたしの欲しいものをいつも手に入れていた

流行りのワンピース
両親の愛情
担任からの信頼
優秀な成績

うらやましい
ねたましい
くやしい

でも

友達だから
わたしは今日も笑顔であなたの隣にいるよ

あなたも
わたしの友達だから
わたしのこと裏切ったりなんかしないよね

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