香水
街角でふと感じた香りに振り返る
懐かしい、でも決して忘れることのない
だけど、どんだけ辺りを見回しても
君は見つからない
爽やかだけどほんの少し甘い
君が毎日まとっていた香り
君を抱きしめた後には
僕にも少しその香りが移って
穏やかで、幸せな気持ちになれたんだ
だけど君はもう僕のそばにいない
あの時にはあった微かな残り香も
月日とともに薄れて
今はもう、どこにも感じなくなってしまった
懐かしい、忘れがたいあの香り
君に会いたい君を見たい
だけど、無常にも一度は捉えた香りは
霧散してもう二度と捉えられなかった
言葉はいらない、ただ・・・
たくさん、話したいことがあった
言いたいこと、聞きたいこと
たくさん、あったはずだった
なのに
いざ君を目の前にして
何も言葉がでてこなくて
君を見つめたまま口をぱくぱくさせてて
ただの不審人物だった
だけど
そんなのは、君も同じだったみたいで
少しだけ首をかしげて僕を見て
微笑みを浮かべながらも
何度も口を開きかけては言葉を選んでいる
そっか
言葉なんて、必要なかったんだ
だから今はただ
強く強く、君を抱きしめる
突然の君の訪問。
明け方のチャイム
扉を開けると君がいた
どうして、どうして…どうして?
君が訪ねてくることなんて
今まで一度だってなかったじゃない?
びっくりする僕を横目に
上がり込もうとする君
待って、まって、まって!!!
来客が来ることを想定していない
僕の部屋は人にはお見せできないんだ
慌てる僕を見て
可笑しそうに、いたずらっぽく君が笑う
なんで?どうしたの?何しに来たの?
疑問で頭がいっぱいの僕に
君は後ろ手に持っていた袋を出したんだ
誕生日おめでとう!
今日は私が掃除してご飯を作るね!
雨に佇む
いつもは人でごったがえす道も
今日はまばらで
たまに通る人たちも
足早に先を急ぐ
外は暗く不思議に静かで
時間の感覚も
この世に存在しているのかさえも
曖昧になる
立ち尽くす身体は
もはや傘も意味をなさないほど
濡れているけれど
まだ諦める気にはなれない
私の日記帳
可愛いノートを見つけたの
ピンクに箔押しされた表紙も素敵だけれど
さらっとした手触りがたまらない
ちょっとお高いなって思ったけれど
この子に日記を書こうと思うの
飽きっぽい私でも
こんなにときめくノートなら
きっと続けられると思うんだ
お引越しの荷造りをしてて
最初のページにそう書かれたノートを見つけた
三ページくらい日記が書いてあって
その後は真っ白なノート
飽きっぽい私は
そこで日記帳のことなんてすっかり忘れていた
どうしようかな
逡巡して、やっぱりノートを箱に詰める
高かったからもったいないし
やっぱり可愛い
引っ越してからまた日記をつければいいよね