終点
つい、うたた寝をしてしまっていたらしい
気が付くと終点の駅に着いていた
家からは二駅隣の駅だ
そう考えると、
そんなに遠くないはずだけれど
すごく遠いところまで来てしまったよう
知らない土地の感覚に
心がざわめく
幸いにもまだ折り返しの電車がある
だけど、あえて駅を出た
うたた寝のせいか、思ったより元気だ
これも何かの縁
ちょっとした夜の冒険をしてみても
問題はないだろう
上手くいかなくたっていい
「ごめんなさい」
君はすぐあやまる
「私にはできないから」
君はすぐあきらめる
きっと、君は
今までたくさん辛い思いをしたんだね
誰からも褒められず
肯定されず
ほんのささいな失敗をしては
強く責められ続けた
だけと、もう大丈夫
もう君を責める人はどこにもいない
だからやってみよう?
上手くいかなくたっていい
大事なのは、楽しかったかどうかなのだから
蝶よ花よ
もみじのようなお手々をふって
ちょこちょこと歩いてくる
きみは本当に愛らしく愛おしい
まだちょっとだけ人見知りで
知らない人を見つけると
さっと僕の後ろにひっついてくる
そんなきみも
いつかは僕のそばを巣立っていく
その時がきたら
僕は泣いてしまうだろうか
きっと泣いてしまうね
だから今は
精いっぱいにきみのことを愛したい
最初から決まってた
村は、燻された臭いで充満していた。
家屋は全て焼け落ちて原型を留めていなかった。
豊かに実っていた畑も真っ黒で、
もはや見る影もない。
仰ぎ見た空は煙を吸って、深く曇っている。
じきに、降り出してくるだろう。
まだ鎮火していないところが、
これで収まってくれると良いのだが。
ひとしきり村の状態を見て回って
男はひとり、呟いた。
「巫女様。貴女はどこまで知っていたのですか」
この村の結末も、
残された少年の運命も、
最初から、決まっていたのだろうか。
知っていて、自分に託したのだろうか。
ならば、抗ってやろう。
ここから先の運命も、
決まっているのなら、変えてみせよう。
男は踵を返し、村を後にする。
振り返ることはもうなかった。
太陽
眩しい…!
目に刺さる強い光
じりじりと肌が焼ける感覚
思わず、家の中に戻る
季節は夏。天気は快晴
空に浮かぶ光源は
容赦なく気温を上げてくる
暑い…
アスファルトの照り返しが
再び外に出ることを躊躇させる
だけど、行かなければ
同じ陽の下で
君が待っているから
太陽はいつだって眩しいけれど
僕たちはそれ以上に
眩しくて楽しいひとときを過ごそう