最初から決まってた
村は、燻された臭いで充満していた。
家屋は全て焼け落ちて原型を留めていなかった。
豊かに実っていた畑も真っ黒で、
もはや見る影もない。
仰ぎ見た空は煙を吸って、深く曇っている。
じきに、降り出してくるだろう。
まだ鎮火していないところが、
これで収まってくれると良いのだが。
ひとしきり村の状態を見て回って
男はひとり、呟いた。
「巫女様。貴女はどこまで知っていたのですか」
この村の結末も、
残された少年の運命も、
最初から、決まっていたのだろうか。
知っていて、自分に託したのだろうか。
ならば、抗ってやろう。
ここから先の運命も、
決まっているのなら、変えてみせよう。
男は踵を返し、村を後にする。
振り返ることはもうなかった。
8/7/2023, 11:26:19 AM