窓越しに見えるのは
おおきな木
ところどころにはえる草
はいいろの塀のうえに
きりとられたあおい空
それが全てだったぼくのせかいに
ある日きみがあらわれた
透明な板をへだてたこちらとむこうがわ
きみはなんどもぼくの前にあらわれて
やがてぼくのごしゅじんさまが
きみもかぞくにむかえてくれたんだ
おおきな木
ところどころにはえる草
はいいろの塀のうえに
きりとられたあおい空
窓越しに見える世界は変わらないけど
きみといっしょに見る世界は
前よりもきらきらとかがやいてみえるんだ
赤い糸
それは、人には見えぬもの
それは、人にとっては不確かなもの
だけど、決して切れることのない
細くても、確かな縁
赤い糸と呼ばれるけれど
その色は人には見えない
ならば、何故赤なのか
想いの色、情熱の色、血の色
人には見えないから
人は、誰と繋がっているのかわからない
君と繋がっていたい
永遠に、確かな誓い
入道雲
外に出た途端
眩しさと熱気にたじろぐ
お店の冷房が効いていたぶん
暑さが強く感じられる
ひと雨きそうだね
僕の後ろから
君が声をかける
確かに
行きと比べて
ずいぶんと雲が大きくなっている
急いで帰ったほうがいいかな
ふたり並んで
入道雲を背に歩く
古い我が家には冷房はないけれど
雨が降れば少しは涼しくなるかな
夏
夏は嫌いだ
あついし
べたべたするし
やる気が出ない
開け放った窓からは
やかましいほどの虫の声
行き交う車の音
期待していた風なんて
一ミリも入ってこない
あつー
何度目がわからない呻きをあげて
床を転がる僕に声がかけられる
何ころころしてるのよ
だって、あついじゃんー
いつの間にか
君が僕をのぞきこんでいる
素麺買ってきたよ
お昼にしよう
君は微笑んで台所に立つ
ああ、薬味は僕が切るよ
そう?じゃあお願い
僕も、君のとなりにならんで立つ
夏は嫌いだ
あついし
べたべたするし
やる気が出ない
だけど
君と過ごす夏は
嫌いじゃないかもしれない
ここではないどこか
瞳を閉じると、緋色に染まる水平線
ある時は光あふれる鍾乳洞を探検し
またある時は闇の中で小さな灯りを探す
君と見たい景色
君と行きたい場所
いつだって、
ここではないどこかに思いを馳せる