暁怜

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8/15/2023, 12:33:31 PM

相合傘を描く少年
少女は微笑む

風に靡くスカートの青

二人を繋ぐのは夏
見送りに打ち寄せる白い波
覆い隠される想い出

何も残らない砂浜
水平線に陽が沈む

紺碧の世界にふたつの星
空にひとつ
海にひとつ

鷲と海蛍
後に残るは融けた碧光

8/14/2023, 11:35:10 AM

耳もとで、旅の途中の風がささやく。

「今日は、熟れた林檎のかおりを運んだわ」
「あの木の下を通ったら、美しいお姫様がいたのよ」

笑い声がくすぐったく鼓膜をゆすった。
なんだかふしぎな心地になる。
わたしは、自転車のペダルをぐいっと踏み込んだ。

「あなたは、どこへ行くの」

風がそうきいた。
わたしは答えた。

『遠い昔に生まれたところへ』

風は一度だけ、うなずいた。
そして、わたしの手をやさしくとった。

「わたしの行き先と、おんなじだわ」
「ねえ、連れていってあげる」

ふわりと身体が浮き上がって、気づけば空の上。
見下ろすと、倒れたわたしの自転車。
その向こうには、どこまでも広がる碧い海。

わたしは風にほほえんだ。

『いつかもう一度、あの自転車に乗りたいわ』
『だって、わたしはもう──』