どこかで同じように生きている
多分 街ですれ違っただろう
ありふれている 日常に紛れている
そこに君が居たって事 教えてもらってないよ
時計に応える心臓 どれだけの線が交わるの
太陽から逃げるようにして入った、
秋に染まる準備をしたトンネルで、
掬われなかった光をけんけんぱ。
街路樹が吹き抜ける風と共に歌った。
帽子を被り直し、深く息を吸って、
ゆっくり吐きながら、構えるお前の位置を確かめる。
汗の匂いと土の色。
夏の日差しに照らされたグラウンド。
歓声や蝉時雨よりも、
ハッキリと聞こえた気がした、
尾を引く飛行機の音。
右手に強く握ったボール。
お前に届く事を願って投げた。
一人分の宇宙で隠れるように息をして
何かで笑って何かで泣いて
グーにしてポケットに突っ込んだ
弱音を落とした
勇気と名付けられた小さな穴
タイトル【日常のより道】
文字数 400文字くらい
日常に不似合いな声を聞いた。
それは獣の咆哮のようでもあったし、人の断末魔のようでもあった。直後、ドン、と何かが落ちた鈍い音が耳に飛び込んできた。逃れられぬ人のさがなのだろう。私は咄嗟に、思うにスタートの合図を待つ陸上選手さながら、あるいはそれ以上の神経で、声のした方へ顔を向けた。
刹那、落下する黒い影が、私の視界の端を掠めた。
根拠があったわけではないが、私は人が落ちたのだと思い、視線を落下したであろう地点へ動かしてみるが、そこには何も無かった。
先ほど歩いた、ひび割れたアスファルトだけが、ただただ伸びているだけである。
呆然と立ち尽くしていると、ある考えによって全身が粟立った。
因果が逆だ──
生存本能に従うように、踵を返しそそくさとその場を後にした。その時、道の傍に栓の開けられていない缶のコーラと明らかに添えられたであろう名も知らぬ花があるのを見た…………。