何? 負け犬って言われた?
ハハハッ! よかったじゃん!
・・・・・・・えっ? 何も良く無いだって?
うーん。君はこの言葉をどう言う時に使う?
ふんふん。臆病な子が陰で悪口を言ってる時。
他には? 言い訳ばかりの人っか。
ほ、他には無い? すぐ諦める人っねぇ・・・・・・・
君ってもしかして天才?
そんなに使い方があるなんて僕知らなかったよ。
他にもまだある? も、もういいよ!?
ハハハ・・・・・・・。まぁそれも正解だね。
だけど僕の思う正解はね、
誰かが何かに挑んで失敗した時。
その人へ送る最高の賛辞の時に使うのさ。
だってそうじゃん。
負け犬になるには戦って負ける必要があるだろ?
そんな事無い? いーやそんな事あるね。
陰での悪口も、言い訳も、すぐ諦めるのも。
どれもこれも戦って無いじゃん。
こう言う人達は負け犬って言わない。
ただの家畜だよ。
君は出来ないって笑われても、
コソコソせず、言い訳もせず、諦めもしなかった。
最高にかっこいい負け犬だよ!
上手に出来なくたってっさ、君はかっこいいよ?
どう、元気出た?
そうか! じゃあご飯を食べに行こう!
勿論、僕に負けた君の奢りでね!
暖かい風が頬を撫でて、新しい匂いがする季節。
出会いと別れ、物寂しい匂いがする季節。
前を歩く人達が後ろを歩く人達にその場を譲り、頑張れと声を掛けては去っていく。
それが春って季節だと思うんだ。
これは運転も同じだと僕は思った。
前を走る車に追いついて、横を通おって前に出た時の新しい景色。
その車と偶然出会って、長い時間同じ道を走って、変な仲間意識が芽生えてきた途端に速度が合わなくなって、抜いた時の何とも言えない寂しさ。
道路には速い車がいてゆっくり走る車がいて。流れに乗って走るのは運転の当たり前。
でも時々、その自然の流れを邪魔する異物みたいな車が現れる。車は悪くない、悪いのは運転手さん。
前を走る背の高い箱型の車をいつもみたいに僕は抜いたんだ。そしたら直ぐに抜き返されて、急にブレーキを掛けて速度を落としたり、二車線の道をくねくね走ったりして邪魔をしてくる。
勿論僕は無理な追い越しなんてしていないよ?
なのにその車は怒り狂ったように僕に攻撃を繰り返してくる。
僕だってだてに何年もこの仕事をやってない、まだ子供だけど運転にはそれなりに自信があったりする。
ラリーカーを追い抜いたりとかね。
僕は少し仕返しをする事にした。追い抜く為に車線を変えるとその車は一緒に動くから、それを五回くらい素早く繰り返す。
すると、三回目くらいから背の高いその車は動くのが難しくなって来て、五回目には肩輪が浮いていた。
僕はそうやって出来た僅かな時間にその車を抜きさって、二度と追いつけないように速度を上げる。
そう言えば、四月に出てくるあんな人って何て言うんだっけ? ・・・・・・そうだ、
【April Fool】
(四月の愚か者)
僕はいつも思う事がある。
よく言われるんだ、君はまだ子供なんだから無理にそんな事をしなくてもいいんだよって。
多分その人達が言っている事は間違っていないし、そう言われるとそうなのかって、少しは甘えて見ようって思う時もあったりする。
でもこういう時、少ししてから思うんだ。
これは僕にとって普通の事なんだって。
同い年かなって子供達が学校に向かう中、僕は車に乗って色々な人の元へ物を届けてる。
その子達が遊んでいる間に僕は次の荷物をギルドに取りに行って、晩御飯食べている時は・・・・・・同じかな? その後皆んなが寝静まった頃に僕は遠くの場所まで移動して、眠るのはいつも日が昇り始めの、黒と紺色が一緒の空になってから。
別に辛くはない。どちらかと言えば今僕は幸せだ。
でも、大人は僕みたいな子供がこんな仕事をしていると、悲しそうな眼で僕を見つめてそう言ってくる。
それは素直に嬉しい。だけど、そう決めつけないで聞いて欲しいんだ。
届けた先で、感謝された時の嬉しさを。配達物を受け取った時、どんな道を走ろうかって思いを巡らすワクワクを。暗い山道の隙間から時折見える宝箱みたいな夜景の感動を・・・・・・。
どうか僕の幸せを決めつけないで。
それで、もし言葉を貰えるなら・・・・・・ありがとうって言って欲しいな。
それは僕の幸せだから。