あいつの目は透き通った明るい茶色で、木漏れ日みたいだなんて思う。
話すときはいつでもまっすぐ相手を見つめて、何でも見透かしているんじゃないかと思ったこともあった。
その酷く綺麗な目に魅入られたあの日から、見つめられるとどうしようもなく逃げてしまいたくなる。
私を見ないでくれ、と思うようになったのはあいつのせいだ。
私を見て、でもどうか見つけてしまわないで。
(見つめられると)
私の前で弱さを見せないあなたの涙が見たい。
それは純粋な不安だったはずだった。
いつかあなたが壊れてしまわないかという不安。
それがいつの間にか劣情にすり替わっていた。
どうしてこんなにもあなたを苦しめたい?
私だけに弱さを見せてほしい。
壊してみたい。
泣かないよって笑うあなたの涙が見たい。
きっとその目を揺らめかせる雫は綺麗だろうから。
(泣かないよ)
離席した友人が戻ってきたとき気配に気付けずに肩を跳ねさせたら、「下手になったねぇ」と愉しげに笑われた。
「前は気配がしたらすぐ気付いて振り返ってたのにね」なんて言わなくたって分かることを加えて言ってくるあたり意地が悪い。
あなたに絆されたせいだよ、とは言えなくて適当に言い訳をする。
ふぅん、とにやけている友人が癪で小突く。
そんな何でもないようなじゃれ合いが大切で愛おしくてたまらない。
そう思ってしまうのもきっとあなたに絆されたせいだ。
(絆)
君は今、何を考えているのだろう。
何も映さない瞳の奥の暗闇で何を見ているんだろう。
私は今、君のことを見ているよ。
無機質に私が映りこんだその綺麗な目を。視線を返してくれない君を。
今の君に私の淋しさが見えないことだけが救いだ。
(君は今)
あなたは光だ。
暗闇を照らす光。
何があっても翳らない光。
私には眩しすぎる太陽のような光。
私はときどき、その光を穢してみたくなる。
あなたの翳りが見たい。
私だけが見ていたい。
光が強いほど影は濃くなる。
きっと私の劣情はその影なんだろう。
(太陽のような)