にゃほ子

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8/29/2023, 3:16:22 PM

言葉はいらない…ただ…そばに居て、生きて。

私の強い想い。じっと彼を見つめる。

私の気持ちを知ってか知らずか

ふっと目を細め、私の頬に手を添えながら

優しく口付けする。

「そんな顔しないで。必ず帰ってくるから。」

と不安を微塵も感じない、優しく穏やかな声。

これから戦地へと赴く婚約者。

手を伸ばし、貴方の腕を掴んで

『行かないで…一緒にいて。』

と言えずにそっと胸に秘める。

婚約者は、一国の王子様。

国内外で有名で勇敢な騎士。

彼が行かないわけにはいかない。

国民が見守る中、相棒の白馬に跨り

戦地へ向かう騎士団に指揮する。

凛とした表情に、すっとよく通る声で

「皆、家族、恋人、友人との挨拶は済ませたか」

「我々は、絶対に敗れる事はない!」

「必ずや良い知らせと共に、それぞれの元へ

帰還するぞ!」「では!これより戦地へ出発!」

「おーーーーっ!!!!!!!」

大勢の騎士団の声と共に、移動が開始される。

国の入口、門の先頭に見送りに来た私を見つけ

馬上から、王子は声を掛けてくれた。

「それでは、いってくる。必ず生きて戻るから。」

さっき私が思った事!

偶然かもしれないけれど、ふわっと嬉しくなり

目頭が熱くなったと思えば、涙が流れ落ちる。

王子はそんな私を見て、少し困り顔になる。

そして、優しい表情になり

そっと手を伸ばしてきた。

私も無意識に手を差し出す。

触れるか触れないかの軽い口付け。

「帰ってきたら、その美しい手に

しっかり口付けよう。」

大勢の前での発言に、耳まで真っ赤になる私。

それを見て笑う王子。

付き添いの者も近くにいた国民も、微笑む。

気恥ずかしながらも王子を見つめながら

「………はい。いってらっしゃいませ。」

と笑顔で見送る。

安堵した王子は、そのまま騎士団と共に出ていく。

3ヶ月後…………

ただの1回も劣勢になる事なく、みんな無事に帰還

王子は、またこれで名声を手に入れ

この国は、容易に他国から攻め入られる事は

なくなり、安寧を手に入れた。

帰還した、王子は約束通り私の手にしっかり口付け

をし、私はやはり真っ赤になる。

そうして、落ち着いた頃に

めでたく婚礼式を挙げ

王子は、さらに私への溺愛っぷりが増した事は

言うまでもありません♡

8/25/2023, 2:12:46 PM

人は、向かい合わせで座ると緊張してしまうと…

何かで読んだ。

だから、初対面の人には横に座り話すといいと。

左側に座れば、心臓のドキドキが恋愛と錯覚すると

…聞いた気する。

そして、私の向かい側には何故か…苦手な上司が

座っている。

終業後、私はいつも寄るコーヒーショップがある。

それが1日の楽しみ。束の間の休息。

美味しいコーヒーに甘いお菓子…至福の時間だ。

だけど、今日はちっとも癒されない。

目の前に上司がいるからだ。

私は彼が苦手だ。

いつも仏頂面で、端的に手短な指示だけ。

にこりとした姿を1度も見た事がない…

だけど、簡単なアドバイスはいつも的を得ている。

ミスがない完璧な上司なのだ。

そんな彼にはファンもいる。

確かに、綺麗な顔立ちをしているのは認める。

彼女達は、愛想がないのも良いらしい。

昔から異性が苦手な私にはよく分からない。

そうして、何故か向かい合わせのまま

2時間近く経とうとしている。

さすがに気まずくなり、私から話し掛けてみる。

「……っ、あのっ!」

「なんでここに居るんですか?」

私から話しかけられ、びっくりした顔をする。

初めて表情が崩れたのを見た。

少し考え…困った表情をしながら

「……君が好きだから、ここに来た。」

今度は私がびっくりする。

えっ!?…えーーーーっ!!

そんな私の心情を察したのか

上司は「ハハッ」と声を出して笑う。

そして、私をじっと見つめると

「すまない。今更だよな。」

「こんな事なら、もう少し早く伝えたら良かった」

少し悲しそうな表情なる。

「そんな事ないですよ。ありがとうございます。」

「誤解が解けて…良かったです…最期に。」

私が笑顔で答えると

「それなら良かった。ありがとう。」

ふんわり優しい笑顔を浮かべ

上司は、スーッと光に包まれ消えていった。

そう。

今日は、先日事故で亡くなった上司の

告別式帰り。

車に轢かれそうになった子供を助けて

巻き込まれたのだそうだ。

私は、昔から視えてしまうタイプ。

嫌な思いもたくさんしたけど

今日は、この性質で良かったと初めて思った。

お互いもう少し早く話したかったですね。

少し感傷的になりながら、お店を後にした。