【遠い日の記憶】
遠い日の記憶では海に行った。誰かの夢だった可能性もある。でも、とても綺麗な記憶だったことだけ。女性がいた。振り向いたらなびく髪を持った女性。振り向いてきてキスされる寸前で覚める夢。
【空を見上げて心に浮かんだこと】
広かった。ホログラムとかプラネタリウムの天井みたいだなって思った。いつか終わりが来てしまいそうなそんな感覚。空を見上げて心に浮かんだことなんてそんなもん。ロマンチストじゃないんだからそんな大層なことは思いつけるわけじゃなかった。ただ、心から綺麗だな、そんなふうに思った。見上げれば吸われていきそうなのに目が離せない。終わりがあるはずなのに永遠に思えてしまう錯覚。我ながら馬鹿ではあると思う。こんなこと言って、信じてなんて言わないし到底思えない。ただ、ただ、この目に映る空が本物である限りは私は目の前にあることを受け入れたいと思った。
「ってさ、変かな?」
「いいんじゃない、アンタらしいよ。」
空を見上げて深呼吸をしてそのまま目をつぶってみる。あぁ、音だけ聞くと案外遠くなっちゃうんだな。そうでなくても、遠いのだけど私にとって手が届かないほどあそこは遠いらしい。
【終わりにしよう】
終わりにしよう、って。告げた。泣き顔だった。どうして、分かってくれないのってさ。いつも自分の話ばっかのくせに。たまには僕の話も少し聞いてくれたっていいじゃんか。
【手を取り合って】
手を取り合って、口を噤んだ。何も知らずに生きていけるよう。きっと私まだ行けないの。約束をした、怖い話だ。何も言わせぬように呪いをかけて全てを見せて逃れられない世界と私。
【優越感、劣等感】
優越感、劣等感を抱えて生きていく。あの日見た遊園地のメリーゴーランドが忘れられない。光っていた、キラキラ。迷ってしまった、いつの間にか。バカみたいだって思った。知らない土地で迷って周りに人すらいないのに。
「君迷子?」
知らないうちに変わった清楚。昔と今じゃ違う気がする。貴方が嫌なら変わりましょうって鏡の中が揺れ動く。嗚呼、今日から迷わない。約束したから破れない。