【最悪】
最悪だ。こないだから始めたダイエットは続かない。好きなあの子には恋人が出来てた。全部始めるのが遅すぎたのかも。そんな中聞いたあの子お前に気があるらしいよの噂。そんなの期待するしかないじゃないか。
「好きだったよ。」
過去形だった。どうやら、痩せてしまった僕はタイプじゃないらしい。あー、やっぱり最悪なんじゃないか。
【誰にも言えない秘密】
誰にも言えない秘密は女の武器だってお母さんが言っていた。だから、私は秘密を作った。嘘を吐いた。このリップを塗ると勇気が出るんだってさ。ヘアセットは気分で元気さも違う。私にとって私が可愛くなるための嘘。
「アンタは世界一可愛いよ。」
そう言って、彼女は私の少し乱れた前髪を正し始めた。
「貴方の娘だからね。」
それが口癖。私はこの人の娘。だから、世界一可愛いんだ。
【狭い部屋】
この狭い部屋でコーヒーを飲みながら落ち着いてテレビ見たり友だちと電話したりするのが俺の趣味。なんてったって広い部屋は落ち着かない。家族と住んでる時はとても広い部屋だった。家が二階建てでいわゆる豪邸って言われるようなだから、嫌だ。あの人たちをもう思い出したくはない。
「逃げたんでしたっけ?」
「そ、だから近づかないの。」
嫌になるね。広い部屋で人の死体を見るなんて。それも小さい頃。トラウマもんだろ。
【失恋】
私が言えないことってなにがあったっけ。あー、昔のこと。失恋したって、大きな悩みを抱えたって、なんでも言えた。でも、昔のことだけはそれだけは言いたくはなかった。
「いつになったら言ってくれんの。」
「君が離れるって知ったならもう言わないよ。」
だから、言えないって。言わないって。君が離れてしまうから言わないって。
【正直】
正直に言いたいことなんて何一つない。昔から隠して生きてきたから何一つ変わってない。言いたいこと? 言えないこと。
「だから言ったじゃないか。」
嘘つき。そう呼ばれたことがある。本心を言えないようにしたのはそっちだろって。言えなかった言葉。
「妖怪いるってマジ!? いや、でもこのモヤ付きはおるなぁ! あ、俺神社の息子! 霊感あり!」
嘘つきなんて呼ばずに初対面でこれ。正直に言っても信じてくれそうだと思った。というか、これを見て信じないなんて思えなかった。
「見えるよ、信じてくれんの?」
「信じるも何も見えるからね! 今はモヤ付きだけだけど。」
正直に言いたいことが一つだけできた。
「俺に話しかけるなんて、馬鹿なヤツ。」
友だちになってよ。