【子供のままで】
いつからか、自らの容姿を幼い子のようにしていた。子供のままでいたいとかは特になくてつまらんから、なんだと思う。
「そろそろ、上から見るのも飽きた頃ってかつまんないよぉ。」
「仕方ないだろ、私らはそれが仕事なんだ。」
人里からははるか上、雲のそのまたその上の。天界とか言われる場所。そこで、人々を見守って時には助けるのが私たちの役目。そんな、ギリシャ神話に出てくる皆が知っているような神様なんかじゃない。でも、大切な仕事だから。
「てか、その恰好いつ見ても小さくて不便そうだ。なんで、自分で姿変えられるのにそんななりしてんの?」
「特に意味とかはない。ただ、なんとなくだ。」
そう、なんとなく。きっと理由はない。ただ、本当につまらないから。ねぇ、神様。つまんないよ。退屈だよ。もし、神様がいるなら何か楽しいことがしたい。
「あー、神様って私か。」
【愛を叫ぶ。】
クサいだろうか。おかしいだろうか。それならそうと笑ってくれ。でも、これしか知らないんだ。
「好きだ!」
この声があの人の元に届くように精一杯叫ぶ。ただ、愛を叫ぶ。不格好だろうと、失笑されようとめげない負けない貫き通せ。一言だけどもしかしたら伝えていなかったかもしれない言葉。ついさっき、あの人が後押ししたからだ。
「玉砕覚悟で挑んで泣きついてもいいんじゃない?」
泣きつく覚悟。気づけば、後ろ姿に向けて清水の舞台から飛び降りる気持ちで叫んでしまっていた。振り向いたあの人は不適で素敵な笑みを浮かべる。
「やっと言ってくれた。待ってたんだよ。」
この人はこれだから狡いんだ。
【モンシロチョウ】
学校帰りにいたんだ。その日は暑い日だったから、モンシロチョウの羽の1枚とれた死骸が。
「うわ、気持ち悪い。」
順当な反応だと思う。だって、いきなり落ちてたらそりゃそうだ。僕だってそう。その落ちた羽を見て最初に出た言葉が
「仲間が死んじゃった。」
【忘れられない、いつまでも。】
言葉にするとあやふやになって触れようとすれば一瞬で消えてしまう。それでも、貴方が記憶に残ろうとするからだ。忘れられない、いつまでも。繰り返さない、どこまでも。そういう約束。私、今日から迷わない約束よ。
【一年後】
一年後、この地で会うと約束したのに君は来ない。今日がその一年後だってのに。それもそうか。君殺されたんだっけ。夜に通り魔に。許せないよな。約束を果たせないなんて許せない。復讐に来たんだ。
「みぃつけた。ダメじゃないの。そんなに分かりやすく隠れちゃ。」
一振り。バシュッ。血しぶきが飛んで返り血がつく。これで、君との約束は果たせなくても僕は満足したよ。