当然みんなまだ、免許も持っていなかったり車も持っていなかったから、だいたいの子は自転車を買ってた。私の同室の子たちも揃って自転車で出掛けてたから、ますます私は部屋で独りだった。
それを知ってなのか、サカイは自分の部屋に呼んでくれるようになって。同室の子やサカイが仲良くなった男の子数人に混じって、男の子たちの話、聞いてたなぁ。どんな音楽が好きとか、地元でどうしてたとか。
居場所を作ってくれてありがとね。サカイだけじゃなくて、そこにいた子たちも私がそこにいることを当たり前に受け入れてくれてありがとね。
その頃に、薄ーっくて水っぽいインスタントコーヒーの味覚えたよ。寮の部屋にはコーヒーメーカーしかなかったから、とろろ昆布にお湯だけ入れたあんまり味のしないお吸い物も作ってくれたよね、忘れない。
高校を卒後したばかりの子たちが多かったから、ホント、みんな自由を満喫してたよねぇ。まだ成人してないのに親の監視がないからって、成人してる子に買い出し頼んでワインクーラー毎日のようにめっちゃ呑んでてさ。
少しずつ気の合う子たちのグループもできてきて、それぞれ部屋に集まってはお互いのことを話して、呑んだり、歌ったり。親元離れて寂しがる子もいたにはいたけど、1年間一緒に過ごす仲間としてみんなが仲良くしようって、個性強めの子が多かったけど今思うと結構いいバランスだったよね。
初めては何て声をかけられたのかな。
覚えてないや、残念…
いろんな地域から集まった24人。サカイは奈良県出身だった。私も地方だから当然方言なんだけど、寮の同室の子たちは東京だったから、私独り何となくからかわれつつ、やんわりとハブかれてた。
アメリカに留学してまだほんの数日だった。
何がキッカケだったのかな。
部屋に訪ねてきて、様子を伺う程度に穏やかに声をかけてくれた。
なぁんだ、最初っから優しかったんじゃん。
まぁきっと、サカイのことだから、既に作戦を実行してたのかもね。