【一年前】
「これがウワサの?」
「ああ。『一年間で印象的な思い出を自動記述してくれる道具』だと」
「……開発部の人たちに半年くらい休みあげた方がいいんじゃないですか?」
「もしコレが本当に成功してりゃ、ボーナスはたんまり出るさ」
「だと良いんですけどねえ。……じゃ、先輩お先にどうぞ」
「何遠慮してんだ。実験台第一号の栄誉はお前に譲ってやるよ」
「実験台って言っちゃってるじゃないですか!その変なの近づけないで下さい!」
「おとなしくしろって。これを頭に被せて、これをここに付けて……スイッチオン」
「何かあったら本当に化けて出てやりますからね!末代まで祟りますから!!」
「……」
「………」
「…………」
「あの、どうですか?何か動きました?」
「何も」
「え?」
「うんともすんとも言わねえ」
「ええ……?先輩も試してくださいよ」
「しょうがねえな」
「……」
「………」
「…………」
「やっぱり駄目ですね」
「不良品か」
「もしこれがちゃんと動いてたら、どんな思い出が出てきたんでしょうか」
「そりゃお前、俺だったら、だったら……」
「先輩?」
「……いや。お前だったら何が出たと思う?」
「僕ですか。そうですねえ」
「おう」
「………………あれ」
「…………お前もか」
「この一年の思い出、っていわれても」
「そうなんだよな。で」
「これって不良品だと思うか?」
「なあ、今度の休みはどこに行く?この間話題のテーマパークがオープンしただろ、車出すから行ってみないか?」
「お父さん、一年前と比べて変わったね」
「そうねー。何かあったのかしら?」
【初恋の日(日記)】
初恋の日、というものをこのお題で初めて知ったので、由来になった島崎藤村の詩を読んでみた。
一言で言うと、甘ずっぱい。林檎味の飴玉を口の中で転がしたみたい。
翻って自分の初恋を思い返してみると、良い年なのに足をバタバタしたくなるような事ばかりが浮かんでしまう。まだまだほろ苦く、糖衣で包み込めるほどの余裕も無い。
いつか自分もキラキラとした思い出に昇華できることを祈るばかりである。
明日世界が終わるなら、大好きな本を読みながら幸せの中でしにたい