柔らかい雨
気づけば肩がじんわり濡れているほどの柔らかな雨は、ここ最近すっかりご無沙汰だ。
昨日の雨はかなり勢いがあった。
傘に当たるたびにボツ、ボツと大きな音が鳴る。
そう考えると柔らかい雨は罪悪である。
気づかぬうちに濡れてしまう。
私は濡れるのは嫌いではないが、あくまで雨が降っていると認識した上で自分から濡れるのがいいのであって、気づかぬうちに濡れているのは不愉快だ。
自由意思に柔らかな雨が水を差す日がくるまでには、もう少し時間が掛かりそうだ。
一筋の光
窓辺から差す光、その彼方むこうの空
翼をもがれ苦しむ天使がいた
助けを乞う言葉も出せず、ただ落ちていく彼女
だからといって何かできただろうか
手も届かず瞬時に彼女の元へと走ることもできず
彼女に翼を再び、と願う
閃光のように眩い奇跡の光を、彼女に
哀愁をそそる
秋の日、はらはらと舞う紅葉の中。
小さな背中を震わせる少女がいる。
もともと小柄ではあったがさらに小さく儚げに見える。
長い髪が秋風になびく。
その情景に哀愁をそそられない人はいないだろう。
声をかけようとして足元が先に音を立てる。
少女は振り返る。
涙の滲む赤い目元で、少し驚いたように口を押さえる。
「……何しにきたの?」
口調はさっきの印象とは違い、どこか自嘲的な音を転がす。
思わぬ言葉に二の句を告げずにいると、少女は再度口を開いた。
「放っておいてよ。分かるでしょ?」
それでようやく、手元の紙片に気づく
白い、びりびりに破られた封筒。
「ごめん、でも──」
放っておけなくて。
言葉を選ぶ余裕もなく、迷惑そうな彼女に構わずとっさに手元のチョコレートドリンクを押し付けた。
《失恋した人にアプローチすると軽くなびく》
そんな言葉がよぎったが、もう遅かった。
彼女の目元が怒りに赤く染まる。
鏡の中の自分
鏡の中に映る自分は醜い。
どの面を下げて生きている?
生きていいと誰が言った?
ため息と共に問いかける。
鏡の中の自分は困り顔。
生きちゃだめって誰が言ったの?
この顔じゃ生きるのは難しい?
浅い呼吸で問いかける。
毎朝毎朝の問答に、鏡の外から声がする。
生きていてもなんの仕事もしない穀潰し。
生きていてもなんの役にも立たないクズ。
やっぱり、誰かに許可がほしい。
でないと安心して生きられない。
眠りにつく前に
眠りにつく前に、ひとり反省会。
もっとできたはず。もっとやれたはず。
私の怠慢のせいで。私のバカバカ。
ひとしきり心の中でわめき散らしたら、今度は良かったこと探し。
楽しかった。あれは良かったまたやりたいな。
そして明日やりたいことを決めてから眠る。
明日は書類を片付けたいな。