Nekoro

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哀愁をそそる

 秋の日、はらはらと舞う紅葉の中。
 小さな背中を震わせる少女がいる。
 もともと小柄ではあったがさらに小さく儚げに見える。
 長い髪が秋風になびく。
 その情景に哀愁をそそられない人はいないだろう。
 声をかけようとして足元が先に音を立てる。
 少女は振り返る。
 涙の滲む赤い目元で、少し驚いたように口を押さえる。
「……何しにきたの?」
 口調はさっきの印象とは違い、どこか自嘲的な音を転がす。
 思わぬ言葉に二の句を告げずにいると、少女は再度口を開いた。
「放っておいてよ。分かるでしょ?」
 それでようやく、手元の紙片に気づく
 白い、びりびりに破られた封筒。

「ごめん、でも──」
 放っておけなくて。
 言葉を選ぶ余裕もなく、迷惑そうな彼女に構わずとっさに手元のチョコレートドリンクを押し付けた。

《失恋した人にアプローチすると軽くなびく》

 そんな言葉がよぎったが、もう遅かった。
 彼女の目元が怒りに赤く染まる。
 

11/4/2023, 10:20:19 AM