踊るように
踊るように跳ねる。
跳ねて、跳んで、回って。
ひとしきり動いたら休憩。
五秒休んだらもう一度。
跳ねて、跳んで、回って、Arabesque。
今度は身体の軸を糸でピンと吊り下げるように。
アン・ドゥ・トロワ、アン・ドゥ・トロワ。
身体が自然に動くように、動きを習慣として染み込ませる。
今、音楽が途中から鳴ったら?
すぐ行動ができるように足を上げてもう一度。
踊っているのではない、一連の動きを踊りに見せるために流れるように行動するのが踊りなのだ。
踊るように、跳ねて、跳んで、回る。
時を告げる
たった今、スマートフォンから時が止まった音を告げられた。
亡くなったって。
誰が?
祖母が。
今はタクシーを待っている。
あと数日で退院するだろうと、履き替えの靴はどれにしようかと話したところだった。
四年前に救急車で運ばれたときは一命を取り留めた。
昨日も話ができたらしい。
私は?
私はあろうことか睡眠薬を飲んでいて昨日行くことができなかった。
家から祈っただけ。
祈りは届かなかった。
おばあちゃん、ありがとう。
編み物や刺繍を教えてくれて、裁縫セットを譲ってくれて、ありがとう。
教えてもらった時間はすごく楽しかったよ。
ああ、タクシーの音だ。
もう行かなきゃ。
祖母の身体が横たわるその場所へ、いざ。
ハンカチは三枚持っておく。
貝殻
昔は貝殻をよく拾った。
きれいな桜色のものを集めたり、日に透かしていつまでも眺めていたり。
まだ家にある。
大きなもの、小さなもの。
様々なものがある。
だけどいつからだろう、海に足を伸ばさなくなった。
海に行くということは、祖母の家に行くということだから。
体調を崩してから遠出ができなくなり、浜から遠ざかる。
塩ゆでしてもらった貝が恋しい。
久しぶりに貝殻を取り出して、浜を懐かしみたい気分だ。
きらめき
輝く星。淡く瞬く惑星。
その光に隠れて深い闇が見える。
暗い、行く末も見えないほどの闇が。
光が眩いほど、影は暗い。
私もまた、眩しいほどの光輝く人の影で深い影を落とし、ひっそりと暮らしている。
些細なことでも
塵と積もれば山となる。
今日もした些細な喧嘩。
10年前の約束を守っていたら、いつまでも昔のことにしがみついてるって怒られた。
些細な約束でも私は覚えてるよ。
あなたは覚えてないのに謝りもしないの?
些細なことで目くじら立ててって言われても十年は大きいよ。
返してよ。