「ね、叶ったらいいなって思う夢ってある?」
「なんだよ、唐突に?」
さっき貰ったばかりの花を観る。
「お互いが好きだ」って気づいてしまったのに
何だかまだぎこちなくて
まだただの友達のような…
けれど少しだけその『友達の線』を超えてしまった関係が少しいつもの感じとは違う気がする。
「叶ったらいいなって、曖昧じゃないか?」
「夢ってそんなもんじゃない?」
「ん?」
笑顔で花を見ながら口を開く。
「叶わない夢ってある?」
「叶わない夢……叶えたい夢じゃなくてか」
「そう、絶対叶わない夢」
「お前と一生会えなくなる」
「え?」
「叶わない夢じゃないか?」
「…絶対叶わない。だって俺とお前ずっと一緒にいるだろ?」
「……ふふっ、そうだね?」
車の助っ席に座る彼女を見る。
「その花に誓っただろ、お前は一生俺といるんだよ」
episode 叶わぬ夢
「花の香りっていいよな…」
そんな言葉をふと耳に入り横をふと見る。
そこには笑顔で花に鼻を近づけその香りを感じて
満面の笑みを浮かべる彼の姿がいた。
「なぁに?あんまり花に興味なかったんじゃないの?」
私が笑顔を見せながら少し嫌味ったらしい顔で見るその顔を
彼は見るとまた笑顔を見せる。
「そんな事ないさ…こうして花を見ると好きな人に花を送りたくなる気持ちになる」
「え?」
「俺がさ、この目の前にある綺麗な花を買って」
真っ直ぐと見つめるその目を逸らすことが出来ない。
一気に自分の心が早くなるのがわかる。
ドキドキとするその心臓の動きが体に一気に伝わる。
「君に渡したら、俺の気持ち伝わる?」
……そんな事されたら
私が出せる答えなんて1つしかないじゃない。
『好きだよ』
そう言ってるのと同じじゃん。
いつもなんでそうやって私の気持ち先読みして
カッコ良く見せて言っちゃうのよ……
「ね、もう気持ち伝わっちゃったよ…」
「けど言わなきゃわからねぇだろ?」
そこには彼の手に握られた一輪の花。
「ちゃんと買ったよ。俺の気持ち受け取ってくれる?」
彼女がその花を受け取ると鼻に近づける。
「凄くいい香りする」
「俺の気持ちも含まれてるけど?」
彼女がクスクスと笑う。
「私も好きよ、あなたのこと」
episode 『花の香りと共に』