黒い怪物と目があったら、引きずり降ろされるかもしれないから、
下は見ないで走って向こう岸まで行こう。
反射する水たまりを踏みつけて私達は早足で横断歩道を渡る。
暗い、外は私達のたまり場で、今日も明日も草の匂いを身に着けてあそこへ行く。
雨は汗と混じって、高ぶる息に興奮して口角を上げて走り出す。
スクールバッグは私達と同じ匂いがする。肩に降りかかる雨
払う手、茶髪の彼女の黒くなった髪、絡まる腕、跳ねる水、
甘い味は心で溶けて、体表は凍りそうなくらい冷たい。目にしみる緑の光。
こっちに来ないでよ、早く逃げてよ、車さん。
あ、かっこいいかも。自転車の男子。
一瞬の出来事に立ち止まる、水を飛ばすタイヤ。
また走り出す。茶髪の彼女の腕を引いて。
スカートが言ってる、もっと欲しいって。
暖かさを忘れるほど冷たいって。
雨は汗と混じって、高ぶる息に興奮して口角を上げて走り出す。
もっと行かない?もっともっと向こうへ。
あいがないからわからない。
しんどい
苦しい
くるしい
くるしい
かなしかったことがおおすぎたからずっとこころにしたためておいて
じぶんのなかのじぶんがくるしんでればいい、胸さえくるしくなればいいと。
それを飛ばすほうほうもしらずにからだの不調を感じる。
かんたんに愛なんていわないで
それを見つけられなくて、ここまできてあるいてきた
こんなにくるしいのをすぐなおせるものなんてかんたんには想像できないよ。
もうくるしい
いつかなおるなんてうそだ
もう ごろくねんはたってる。
はやくもとにもどりたい
きもちよく生きたい
風の中に誰かの思いがあるなら、それを探るのも良いけど。
最近は耳がよく聞こえるから、苦しめられるし、ひどく脳が振れる。
要は、聞きたくないこともたくさん聞こえるってことで。
ほのかな赤い恋の音も、小さな音。聞こえるのは聞こえたら生きたくなくなるでかい音。
ずっと一人で絡まってるだけ。
もう今は遠くに来たんだろうから、ほどくこともできないんだろうな。
早く頭なんてなくなって、思い切ってきゅーっと背中から刺してくれたらな。
痛いだろうけど、もう疲れたから、それでもいい。
苦くて、噛み合わせの悪い砂利を食べてるみたいな音がする。
黙っててほしい。自分は黙ってる。
だから相手は喋り続けるし、自分の思いも届かない。
うるさい。ごめんなさい。
たまには生きたい。生きたい。
時間が支配している。冗談ではない、本当に深刻なほどだ。
どうして何もかもせっかちにしようとするんだ?自分よ。
なぜなら、時間は限られているからだ。
こんなことしてる暇ないって気づくことこそが、鍵だっていつも言ってるじゃん!
全てに針を指すんだ。今!、今だ!って怠惰に過ぎる時間に刺激を与えてやるんだ。
そうすることこそが人生の鍵なんだ。
そう思ってきたし、そうだ。そうなんだよ。天才よ。
それでも、それから抜け出したいよ。
それでもね。
抜け出して、何も気にしなくていいように自由になりたいんだ。
それが許されないのは、絶対なんだよ。生まれてきた以上、絶対原則だ。
絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対。
壁が厚いし、その突破法があるのかも知らない。
たまには、そうしたいんだ。
正しさと間違いって一体なんだろう。
一体何度共感しては催眠から解けるように感じ方がコロコロと変わるんだ?
ある人の感情をもってしたら、道理の通る悲惨な話だったのに、
それが自己満とトラウマとわがままの権化に変わってしまうのは、あまりに不可思議。
どうしてそれを私は気にするんだ?
関係ないと切り捨てて、耳を塞いで、声に乗った感情なんて感じなければいいじゃないか。
何がそんなに不満なんだ?双方の考えは、正しいってか?
間違いなんてあるんだろうか?
一体いつまで私は正解を探して正そうとしているんだ。
そんなことできやしないのに。
きっと正しさになった双方のどちらかが、10年後に采配をもらうとしたら何だろう。
もしあっちの正しさが正しさになったなら、きっと、餓死を楽しんでるんじゃないかな?
もしこっちの正しさが正しさになったなら、あっちの人が、人間に正しさを求めることを恨むんじゃないかな。
だって、あまりに遅すぎたから。10年後に間違いを知ったって、生きていかなきゃいけないのに馬鹿らしいじゃない。
でも、実は私はそれを望んでるんだ。
あっちの正しさが正しさになったなら、あまりにこっちの彼女が不憫だから。