溢れ出す言葉

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黒い怪物と目があったら、引きずり降ろされるかもしれないから、
下は見ないで走って向こう岸まで行こう。
反射する水たまりを踏みつけて私達は早足で横断歩道を渡る。
  暗い、外は私達のたまり場で、今日も明日も草の匂いを身に着けてあそこへ行く。
雨は汗と混じって、高ぶる息に興奮して口角を上げて走り出す。
スクールバッグは私達と同じ匂いがする。肩に降りかかる雨
  払う手、茶髪の彼女の黒くなった髪、絡まる腕、跳ねる水、
甘い味は心で溶けて、体表は凍りそうなくらい冷たい。目にしみる緑の光。
こっちに来ないでよ、早く逃げてよ、車さん。
あ、かっこいいかも。自転車の男子。
一瞬の出来事に立ち止まる、水を飛ばすタイヤ。
 また走り出す。茶髪の彼女の腕を引いて。
スカートが言ってる、もっと欲しいって。
暖かさを忘れるほど冷たいって。
雨は汗と混じって、高ぶる息に興奮して口角を上げて走り出す。
 もっと行かない?もっともっと向こうへ。
 

5/25/2024, 11:49:56 AM