嘘をついた。
多分誰も気づいてない。だってそれは前提だから。
むしろ本当のことを言ってしまったらそっちの方が嘘だと捉えられるかもしれない。人によっては嘘であって欲しいと望まれるだろう。
それにもうきっと本当のことを言う機会もない。仲間内で当たり前のようにこの嘘をつく私の姿は、鏡で見ても不自然なくらい自然だ。このまま嘘が本当になるんじゃないかって希望にはいつも絶妙なタイミングで裏切られるけど。
嘘をついている。きっとこれからもつき続ける。
本当のことを言えないのは辛い。お風呂の鏡の中の私は誰にも理解されないであろう絶望に顔をゆがめてる。
私が弱いだけ。
彼氏なんて全然興味無いけど、ここでは異端になっちゃうから。本当に弱い私だから、迂闊に弱みを見せれないのだ、この世界には。
表面上の理解なんて絶対要らない。誰かに何か言われる隙なんて絶対与えたくない。
この居場所を守り続けるために、言葉で、態度で……
みんなと同じ色の恋をしてるふりをし続ける。
眠りにつく前に急に色んなことをやらないといけない気になる。
あれを飲んで、これはやり終えて、あれを準備して……
そんなの日中気にならないのに。深夜病は今日も進行してる。
孤独を感じなくなることは永遠にないだろう。
きっといつまでも、心の空虚を満たそうともがき続けるのだろう。
空虚さに潰されそうになって外に発散出来るうちはいいが、内省してばかりでは心が痛むばかりで、立ち上がる気力も無くなってしまう。
ある文豪が述べたように、孤独とは、幻を求めて満たされない、渇きのことなのである。
空想の世界は楽しすぎて現実への絶望が大きくなるから、理想郷なんて作らない。等身大の世界の箱、これが私の手に届く範疇。与えられた選択肢を全部買って得られるならそれに優る贅沢は無い。
どこかで経験した匂いに敏感だ。だから秋はいつも記憶を辿ってる。