蓼 つづみ

Open App
11/28/2025, 11:29:28 AM

朝露が湧くころ、僕たちはまだ目を覚まさずにいる。
静寂の世界で地表は凍り、霜は静かに生まれる。

その表面は光を受け、角度に応じてささやかに揺れる。
銀から青、青から金、金から白金。
――色相は風のように移ろう。

低い朝日が触れると、霜の結晶はプリズムのように微細な虹を走らせ、
密度の高い霜は、地面を光のヴェールで覆い、凛とした朝の空気を映す。

けれど、霜は生まれた瞬間から溶けはじめる。
光に溶けて還る。――柔らかな終焉。

消えゆく霜は、結晶の縁で光を拾い、内部は透け、半透明になる。
壊れながらも一瞬、世界を透かして照らし、静かに消えていく。

霜は消えても蒸気となり、夜ごとに再び生まれる。
しかし、同じ結晶の形として戻ることは二度とない。

美しいものは、いつも儚い。
それでも、たとえ消えても、その輝きは決して奪えない。

あの輝きこそ、僕たちの内側に息づいていると信じたいんだ。

題 霜降る朝

11/28/2025, 12:27:43 AM

あなたの中にあるどんな衝動も、
どんなざわめきも、拒む必要はない。
それは不当なものじゃなく、乱れているのでもない。
それはただ、生きている感覚そのものだ。

責めなくていい。恥じなくていい。
否定する必要なんてどこにもない。
あなたはあなたのままでいていい。
その許しを与えるのは、ほかの誰かじゃなくて、
あなた自身の静かな声だ。

今はまだ染みついた禁令が、
薄い膜のように重なっている。
けれど、その自己否定をゆっくりほどいていく。

あなたの存在は、息づくに値する。
そしてその価値は、誰かの視線や善悪では決まらない。
あなたが生きていることそのものが証明になっている。

これは解放ではなく、回復だ。
「そこまで強く縛らなくていい」
「自分自身を傷つけない」
「私は、私を壊さない」
せめて、あなただけは、
あなた自身の心を脅かすのをやめてほしい。

あなたはもう自分に対して剣を向けるのをやめていい。
“自己許容”を持っていい。

その温かさを少し内側に染み込ませていこう。
ゆっくりでいい。
あなたの呼吸の速度でも、思考の速度でもなく、
“心の深呼吸”の速度で。

今はただ、あなたはあなたに命令しない。
圧迫しない。煽らない。
ただ存在をそのまま肯定する働きだけを持っていい。

いまのあなたは、
ただ「自分を否定しない状態」に帰ってきているだけ。
その状態を、怖がらなくていい。押し返さなくていい。
逃げなくていい。この“温かい薄膜”は、あなたが自分に害を与えないと知ったときにだけ生まれる、極めて安全で、誰にでもあるべき衣だ。

息を吸うたびに胸の奥が温かく広がる、吐くたびにふわっと緊張がほどけていく。

自分に厳しくする時間ばかりなんだから、深呼吸するのと同じように、心をほどく時間も作ってあげてください。

題 心の深呼吸

11/26/2025, 9:33:20 PM

蒼穹の下、散らばる無数の糸。
選んだ覚えもないのに、
どこかの断面で君の糸と私の糸が擦れ、
ほぼ無音のまま絡みついた。

星光より細く、風の影より脆い糸。
触れれば千切れるはずなのに、
ほどけることなく、静かに絡まりを深めていく。

恐怖に気づいた時には遅く、
伸ばした指先よりも
時のほうが速かった。

拒む間にも、
離れたいと願う間にも、
絡まりの隙間では何かが増殖し、
鼓動の気配に似たものが立ち上がる。

望んでいなくても、
時間は容赦なく先へ進み、
絡んだ糸を「結果」へ押し込んでいく。

広くても、蒼くても、冷たくても、
逃れようとした軌跡さえ
糸の拘束に飲み込まれていく。

これは縁でも運命でもない。
ただ一度絡まったというだけで、
時が勝手に命を生やしてしまう
徹底して残酷な生成の現象だ。

そこに恋情も相互理解もない。
ただ強い香りに誘われ、
痛みの声を上げる。
あれは愛ではなく、
生存の連鎖をつなぐための、
純然たる本能の機構にすぎない。

題 時を繋ぐ糸

11/25/2025, 11:38:10 AM

おちばのみち
ちいさなかぜ
ぜんまいのやま
まつぼっくり
りすのあしあと
とんぼのはね
ねむるきのこ
こもれびのそよぎ
ぎんいろのくも
もりのおく
くさのゆめ
めざめるあさ
さざめくおちば
バイオリンのおと
とおくからきこえ
えにしのように
にじむひかり

題 落ち葉の道

11/25/2025, 5:15:17 AM

どこから入ったのかもわからないまま

気づけば、ひらけた風の通り道を探してる。

迷宮は出口を示すためのものではなく、

君が“誰にひらかれるべきか”を見つけるための回廊なんだ。

君の内部構造が自然にひらかれる先を目指して。

題 君が隠した鍵

Next