「風が運ぶもの」
風が運ぶもの。それは季節。
あたたかさもつめたさも、はじまりもおわりも。
風が運ぶもの。それは雲。
晴れ間も虹も、雨も雪も。
風が運ぶものっ……それはっ……ハークション!!
それはっ……花粉っ……!
今日もくしゃみがっ……止まらな……ックション!!
せっかくの春なのに……!!
「question」
わたげちゃん。うちの子になってくれてありがとう。
ねぇ、どうしてうちの子になってくれたの?
どうしてそんなに可愛いの?
まっしろふわふわの毛、青い目、ピンクの鼻、ちいさな肉球。
どれをとっても魅力的。とってもとっても魅力的。
こんなに可愛いのに、どうしてひとりぼっちだったの?
あれは2年前。雨の夜の中、ぶるぶる震える小さな白い毛玉を見つけた。近づいてから初めて子猫だと分かった。
どうしたらいいのか分からなかったからとにかく急いで暖めて、動物病院に連れて行って。絶対に守らないと!その気持ちだけで動いた。
そのあときみは頑張って回復して、初めてかわいい声で鳴いた。あんまりかわいかったから私、倒れそうになっちゃって。頑張った甲斐があったなぁって思って。本当に嬉しかった。
わたげちゃん。ふわふわわたげちゃん。
これからもずっと一緒にいてくれる?
……なんていう問いに答えようとすらせず、わたげは日向ぼっこを続けていた。
「約束」
世の中には色んな約束事がある。
科学、法則、法律、時間。
そんな約束事の数々に毎日毎日追われて、そろそろ疲れてきた。
全てから解放されたとしても、「死」という約束事からは逃れられない。でも、死は全てを受け入れてくれる。つめたくてあたたかい。
約束はひとをなかなか死なせてはくれない。無理矢理にでも、命をこの世に繋ぎ止める。だってそれがお約束だから。
でも、必ず死は全てを訪れる。だってそれが約束だから。
約束を果たさないために、約束を果たす。
今日も約束事に追われて、転びかけて、苦しむ。
「ひらり」
太陽の花びらはらり 勇気が心を温める
満月の青葉ひらり 静けさが心を飾る
真夜中にふらり そこには誰もいない
孤独にへらり 乾いた笑いが出た
透明の涙ほろり 風が涙をふいた
「誰かしら?」
今日も変わらず、穏やかで平和。
これもあの方が作った機械の少年のお陰。
こんな時間が死ぬまで続くのは、とても幸せ。
鳥籠に守られて、私は美しく生きる。自由に生きる。
そんなある日、誰かがこの世界に来た。
誰かしら?
私にお客さんはいないはずなのに。
そんなことを考えながら、私はそっと戸を開けた。
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎……?」
聞こえるのは懐かしい声。
ずっと会いたかったひとの、懐かしいあの声。
「博士……?」「あぁ、そうだよ。久しぶりだね。」
「ずっと逢いたかった……!私はずっと寂しくて、あなたに逢いたくて逢いたくて仕方なかった!」
「でも、あなたは本当に博士なの?あなたは亡くなったはずでしょう?」「私のことを亡霊だと思っているのかい?」「……あなたに逢えるのは嬉しいけれど、でも……。」
「……とても信じられないの。あなたは私の名を知っているから、あなたは偽物ではない。それならこれは夢?」
「夢じゃないよ。私は本物だ。」
「君が心配で会いに来たんだよ。」「本当に……?」「ああ。」
「せっかくだから、少し話をしようか。」「ええ、喜んで!」
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へへっ、お互いが嬉しそうでよかったよ。
提案した甲斐があった!
さて、ボクは仕事の続きをしようか。