「あなたとわたし」
あなたはわたしを創った
わたしはあなたによって創られた機械人形
わたしはあなたに尽くすために生まれたの
わたしはあなたのために なんだって
なんだってするの
わたしの愛するあなたのためなら
この体さえ惜しくない
この命さえも惜しくない
なのに
あなたはわたしを置いて
先に行ってしまった
わたしを置いて どこまで?
わたしがあなたの役に立てなかったから?
わたしがあなたを満たせるほどの愛を捧げなかったから?
わたしが わたしだったから?
わたしはあなたを 幸せにはできなかった
だったら
だったらもう
この命は
いらない
「柔らかい雨」
秋。夏の暑さに終わりを告げ、少しずつ寒さを運んでくる季節。
河原にきのこを、猫に冬毛を、人に憂いを与える。
太陽がなかなか顔を出さなくなるから、なんとなく寂しい。
でも、秋の雨は柔らかい。
穏やかな音を立てて、明るい空に虹をかける。
金木犀の香りを漂わせて、皆に元気を与える。
夢か現か、山にはぼんやりと霧を纏わせる。
この柔らかい雨を、金色に光る雨を見て思う。
秋は寂しいけれど、世界のあたたかさと美しさを教えてくれる、そんな優しい季節だと。
やがてこの雨は霙に、雪に変わって町を白く染める。
全てを無に還す白い死をもたらす。
柔らかい雨が雪に変わる前に。
秋の優しさに触れて、包まれて。
ひんやりとした暖かさに触れましょう。
「一筋の光」
物を書く皆さんへ
今、あなたは孤独で寂しい日々を送っているかもしれません。
寄り添ってくれるひとや、安心できる居場所が存在しない。
そんな辛い日々を、送っているかもしれません。
ですが、あなたのそばにはノートと鉛筆があります。
「書く習慣」というこの場所もあります。
何かを見て聞いて、それを文章にする。
たくさんの素敵な言葉で毎日を紡いで、あたたかい心のマフラーを編む。
それを繰り返すことで、自分に寄り添い、心の拠り所ができるのです。
だから私はこう言い続けたい。
あなたはひとりであっても、孤独ではない、と。
過去のあなた自身が、今のあなたのそばにずっといて、決してそこを離れないから。
あなたの言葉が、心を温め、守るから。
もし私が、私の書いた文章が、あなたにそっと寄り添えたら。
一筋の光となれたら。
私はそれだけで幸せです。
「哀愁を誘う」
マッドサイエンティストを名乗る機械のこどもと、宇宙管理士の概念の少年が家を出た。家には自分と、さらに小さな機械が残された。
自分が寝るのにはまだ早い時間だが、こどもにとってはもう眠りにつく時間だ。小さなこどもをひとりで寝かすわけにはいかないから、自分も眠ることにした。
自分のベッドに、幼いこどもを入れる。
布団をぎゅっと抱きしめて柔らかい笑顔を見せる。
……可愛いな。
「ね、ね!ニンゲンしゃん!」「ん?」
「おとーしゃん、いいこだった でちょ?」「そうだね。」
「えへー!ボク、おとーしゃんだいしゅきなのー!」
そうか、と言いながらふわふわの頭を撫でる。その子は嬉しそうな様子で自分の胸に顔を埋めた。
……羨ましいな。愛する家族がいて。
家族にあんな風に愛されて。
「ニンゲンしゃ、かなちいの?」「いや、全然?」
「でも、ちょっとしょんぼりなのー。」
……こんな小さなこどもに心配されるなんて情け無いな。
「じゃ、ぎゅー!ちよ?」「え?」「ぎゅー!」
小さくて暖かいからだがくっつく。
「ニンゲンしゃん!だいしゅきだよー!」
「……ありがとう。」「んー!」
「あのねー!ぎゅーはねー、あいほーじょーげん?なんだよー!」
「……?あぁ、愛情表現、か。」「んー!」
「おにいちゃん。」「どちたの?」「おにいちゃんは優しいんだな。」「んー?えへー!」
だんだん眠たそうになってきた。
「もう眠いよな。おやすみ。」「……んー。おやしゅみ。」
言い終わるや否や、小さな機械は眠り始めた。
こうして自分も寝始めたが、あるときふと目が覚めた。
なんとなく、すすり泣く声が聞こえた気がして周りを見る。
あの子が泣いているのだとすぐに分かった。
思わず体を起こす。小さな背中が見えた。
柔らかなほっぺたから涙が滴る。
その姿からは哀愁が漂っていて、どんな言葉をかけていいのかすぐには分からなかった。
だから自分は、かわいいその子を背中から抱きしめた。
「ニンゲンしゃ……。」「本当はお父さんのほうがいいよな?お父さんじゃなくて自分なんかでごめん。」
「ニンゲンしゃん……。」機械の子どもはこっちを向いて、自分にくっつく。「ニンゲンしゃん、だいしゅきなの。でもね、もっとおとーしゃんもだっこちてほちかった。」
……そうだよな。だってこの子は実質2歳の、本当に小さな子なんだから。もっと親に甘えたかっただろうに。
「でも、自分でよかったら……君のお父さんの代わりにはなれないけど、いっぱい甘えていいから。いっぱい泣いていいから。……大丈夫だよ。」「ん……。」
「ニンゲンしゃん、やしゃちいの。だいしゅき。」
「よかった。ありがとう。もう寂しくない?」「ん!」
「あまえんぼちてねんねしゅる!」
安心した表情で、その子は自分に抱きついたまま眠った。
理由はわからないけど、自分はすごく嬉しかった。
……この子が寂しい思いをする日が、いつか終わりますように。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
─────────────────────────────
「鏡の中の自分」
遅刻だー!!!∑︎ (╯︎•ω•╰︎)
゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。*⌒*。*゚*⌒*゚*。
ちょっとの間仕事場を開けていただけなのに、どうやらその一瞬の間に色々なひとに呼ばれていたみたいだ。「とにかく急ごう!」その一心でボクと◇◇◇は本部に戻った。
「少々準備にかかりそうだから、ゆっくり待っていてよ。」
ボクは彼にそう言って奥に引っ込んだ。
はぁ。最近は色々ありすぎて疲れたよ。
だが、ボクは元気のいいところがチャームポイントの公認宇宙管理士「マッドサイエンティスト」。
だから「いつも通り」元気でいないと。
そう言い聞かせて鏡を見る。
……うん、バッチリだ。
鏡の中のボクは、いつも通り元気だった。
はぁ……ボクはすっかり自分の感情に蓋をするのが得意になってしまったようだ。
こんなふうになったのは、いつからだろうね?
誰も悪くない。何も悪くない。
ただボクが疲れているだけだ。
もう少しだけ、あと少しだけ頑張らないと。
これできっと、一段落つく。
ほっとしたら、いつものようにお菓子を食べるんだ!
そう信じて、ボクは笑顔で奥の部屋を出た。
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにした!そうしたらなんと!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚したうえ、アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかった!そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!
……ひとまずなんとか兄を落ち着かせたが、色々と大ダメージを喰らったよ!ボクの右腕は吹き飛んだし、ニンゲンくんにも怪我を負わせてしまった!きょうだいについても、「倫理」を忘れてしまうくらいのデータ削除に苦しめられていたことがわかった。
その時、ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。「機械だから」って気味悪がられたけれど、ボクがキミを……キミ達宇宙を大切に思っているのは本当だよ?
それからボクは弁護人として、裁判で兄と旧型管理士の命を守ることができた。だが、きょうだいが公認宇宙管理士の資格を再取得できるようになるまであと50年。その間の兄の居場所は宇宙管理機構にはない。だから、ニンゲンくんに、もう一度一緒に暮らそうと伝えた。そして、優しいキミに受け入れてもらえた。
小さな兄を迎えて、改めて日常を送ることになったボク達。しばらくのほほんと暮らしていたが、そんなある日、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?なんでも、父の声を聞いて目覚めたらしい。だが父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、彼岸へと進む。
そしてついにボク達の父なる元公認宇宙管理士と再会できたんだ!
……やっぱり家族みんなが揃うと、すごく幸せだね。
そして、構造色の少年の名前と正体が分かったよ。なんと彼は、父が考えた「理想の宇宙管理士」の概念だった。概念を作った本人が亡くなったことと、ボク以外の生きた存在に知られていないことで、彼の性質が不安定だった原因も分かった。
ボクが概念を立派なものに書き換えることで、おそらく彼は長生きするだろうということだ。というわけで、ボクも立派に成長を続けるぞ!
─────────────────────────────