#星が溢れる
一つ、星が溢れた。
誰より強く、誰より重く。
星って近付くと案外不細工。
凹んでいたり、ごみがくるくる回ってたり。
ただの石っころみたい。
ならどうしてみんな星空は綺麗だと言うの?
ならどうして他人は光り輝いて見えるの?
流した汗の分だけ、星が溢れる。
悩んだ涙の分だけ、星が溢れる。
そうやって積み重ねた人の宇宙は星で溢れてきらきらしている。振り返った時、遠くで人生を彩る。
ここからだとまだ見えないだけで、君だって、僕だって、
また一つ、星が溢れた。
#ずっと隣で
君の隣の席は自分だけのものだと錯覚していた。
僕にとっての一番は君だから、君も同じものを返してくれるんだと、勝手に、無意識に、決めつけていた。
お前は一人でも前を向いて進めるんだ、と知ったのは何もかもが届かなくなってからだった。
僕は死んだらしい。何が未練なのか、現世を彷徨う羽目になってしまった。真っ先に心配したのは君のことだった。
これから僕がいないのに、君はどうやって生きていくんだろうと心配してやったのだ。
それなのにどうだ、お前、実際は、新しいコミュニティで新しいことをしてのうのうと暮らしているじゃないか。まるで最初から僕が隣にいなかったかのように。
僕がお前を失ったらきっと涙に暮れたし、これから先の生きる意味を見つけるのにだって随分苦労するんだろうな。
僕にとってお前は、それくらい大切だったのに。
僕はとても弱い生き物で、だから、多分、強くて逞しいお前と一緒に居るのが心地よかったのかもしれない。
ねぇ、僕は弱いから、ゆうれいになってもお前の隣に居るよ。
お前が新しい仲間と笑いあってても、
お前があの頃とはすっかり変わってしまってても、
お前が一人で感傷的になってても、
ずっと。
#平穏な日常
その言葉の羅列から、何を想像しているのだろう。
普通に学校に行って普通にご飯を食べて普通に眠って一日を終えるのかもしれない。大人なら職場を想像する。芸術家なら同じ一日の連続とは思わないだろうし、お金持ちなら平民の想像よりもグレードが上がるだろう。
生まれた環境は違うのに、皆普通を知っている。
誰も罵詈雑言と暴力の日々を平穏な日々と定義しない。
かといって大きな目標を成し遂げた日も平穏な日常ではない。
大多数はそう思う、と思う。平和な日が連続することを平穏な日常と呼ばせてほしい。平和は、一般的には望まれるものだから。
どんなに優れた人でも、皆普通を持っている……?
憧れながら生きる自分の人生だって、自分から見れば精神的に波乱万丈だが傍から見れば比較的平穏である。いじめもなけりゃ、人より秀でた部分もない。自分で勝手に人と比べて、客観的に見た周りの人との差に落ち込んで勝手に首を絞めている。
その思いに差はあれど、皆普通に憧れがある?
いつか大人になったら、苦しんでいる学生の時の自分を客観的に見れるようになるかもしれない。その時にはきっと、大人の自分と学生の自分を比べて、学生の自分を『平穏な日常』だと言うようになるのだ。
それを良しとするか悪しとするか。