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#ずっと隣で


君の隣の席は自分だけのものだと錯覚していた。
僕にとっての一番は君だから、君も同じものを返してくれるんだと、勝手に、無意識に、決めつけていた。
お前は一人でも前を向いて進めるんだ、と知ったのは何もかもが届かなくなってからだった。

僕は死んだらしい。何が未練なのか、現世を彷徨う羽目になってしまった。真っ先に心配したのは君のことだった。
これから僕がいないのに、君はどうやって生きていくんだろうと心配してやったのだ。

それなのにどうだ、お前、実際は、新しいコミュニティで新しいことをしてのうのうと暮らしているじゃないか。まるで最初から僕が隣にいなかったかのように。
僕がお前を失ったらきっと涙に暮れたし、これから先の生きる意味を見つけるのにだって随分苦労するんだろうな。


僕にとってお前は、それくらい大切だったのに。


僕はとても弱い生き物で、だから、多分、強くて逞しいお前と一緒に居るのが心地よかったのかもしれない。

ねぇ、僕は弱いから、ゆうれいになってもお前の隣に居るよ。
お前が新しい仲間と笑いあってても、
お前があの頃とはすっかり変わってしまってても、
お前が一人で感傷的になってても、

ずっと。

3/13/2024, 2:58:09 PM